お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

むかしむかし、5歳の女の子、美愛ちゃんがいました。ある日、美愛ちゃんは父さま、母さま、姉さまと一緒に散歩をしていると、茜色の空に美しい蝶を見つけました。

蝶はふわふわと夕日に向かって飛んでいき、美愛ちゃんは夢中になってその蝶を追いかけました。しばらくして、見知らぬ小さな公園に着くと、一緒にいたはずの家族がいないことに気づきました。

急に心細くなった美愛ちゃんは、泣き出してしまいました。


「どうしたの? ケガでもしているの?」


ちょうどその時、学生服を着たお兄さんが話しかけてくれました。


「……っ、と、父さまと母さまと姉さまが
いないの……I want my daddy. I wanna go home」

「えーと、お父さんたちとはぐれてしまって、おうちに帰りたいのか……ねぇ、可愛いお姫様、君の名前は?」


「ミャー」

「えっ、猫? とりあえず、今からお巡りさんに電話して助けてもらおうね!」


警察官が到着するまで、お兄さんは美愛ちゃんを泣き止ませようとたくさん話しかけてくれましたが、彼女は泣き止みませんでした。


「好きな動物は?」

「……っ」

「僕は学校に行ってるんだ。ミャーちゃんは?」

「ぅ……」

「好きな食べ物は?」

「……お、お菓子、ケーキ」


お兄さんはカバンの中から小さな丸箱を取り出し、フタを開けました。


「これはね、僕が一番好きなキャラメルなんだ。一緒に食べよう」


お兄さんは1粒のキャラメルを取り出し、美愛ちゃんのお口の中へ入れました。


「……っ、うーん、美味しい。これMeuh(ムー)のキャラメルだ」

「えっ、これ食べたことあるの? 日本じゃ売ってないんだけど」

「箱に赤いベル付けた牛さんいるの」「そうそう、これ美味しいんだよね。あっ、これあげるよ」


お兄さんは、箱の中に入っている小さな赤いベルと牛のチャームが付いたキーホルダーをくれました。


「特別なおまけみたいだね。はい、どうぞ」

「うわー、お兄ちゃん、ありがとう! ミャーこれ大事ね。あのね、お兄ちゃんは王子さま?」


満面の笑みを浮かべて、美愛ちゃんが尋ねました。


「えっ、僕? どうかな? ミャーちゃんは僕を王子様だと思ってくれる?」

「うん、王子様!」

「僕が王子様なら、ミャーちゃんはとてもかわいいお姫様だよ。」


そう言って、お兄さんは美愛ちゃんの頭を優しく撫でてくれました。この瞬間、美愛ちゃんの心は温かくなり、安心感を覚えました。


「ミャーはお兄ちゃんのお姫様なの? じゃあ、大きくなったら迎えに来てくれる? お兄ちゃんのお嫁さんにしてくれるの?」


「あはは〜、うん、いいよ。大きくなったらね!」

「約束ね、指切りげんまん……」