お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

「終業後に集まってもらって悪いね。実は、緊急に兄貴たちとミーティングを行った際の話をみんなにも知ってもらい、うちでも早急に対策を講じたいと考えている」


短いため息を吐き出し、みんなを見渡した雅が続ける。


「うちと取引のある三光銀行ミッドタウン支店だが、顧客離れが進んでいる。銀行自体の問題ではないが、うちの総務の問題児である佐藤麻茉(さとう・あさま)がいろいろと外でトラブルを起こしているらしい。彼女の父親がミッドタウン支店長であるため、彼にも娘の悪影響が出始めているようだ。彼女は社内でも問題を引き起こしていて、みんなには証拠を残すよう指示を出していたが、その後の進展はどうなった?」


最初に発言したのは、総務部長の杉山。


「佐藤は未だに自分の仕事を他の社員に押し付けています。就業中はほとんどケータイやネットサーフィンをしていることが多いです。率先して仕事をするのは、彼女の好みの男性が関わっている時だけのようです。以前のように特定の人物をターゲットに絞って嫌がらせをしている様子は見受けられません。ただ、音声の録音や動画などの証拠がないため、状況を証明するのが難しいです」


ここで顧問弁護士の涼介が口を挟む。


「今ある証拠だけでは、解雇は難しいだろう」


しばらく考え込んだ雅は、涼介に尋ねた。


「セキュリティー目的で、各部署や廊下に監視カメラを設置するのはどうだろうか? 特に一台は、佐藤麻茉のコンピューター画面が見える位置に」

「俺の知り合いに、明日の朝までに設置できるか聞いてみようか?」


雅はうなずき、すぐに涼介がケータイで誰かに連絡を取り始める。


「お願いするよ。これで証拠がもっと集めやすくなると思う。とにかく、今日のミーティングで、俺たちがみんなミッドタウン支店との取引を、今年中に終了することが決まった。佐藤家とは手を切る」


ミーティングが終わり、それぞれが席を立とうとしたとき、大和が報告を始めた。


「あっ、そうだ、言うのを忘れていた。今日、面接した子を採用したから。彼女、花村さんが明日から来るので、みんなよろしくね」

「おい、大和。即決して大丈夫なのか? ちゃんと俺のサポートができるのか? また男漁りに来る女はごめんだよ」


うんざりした表情の雅。