お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜

その時、ノックの音が響く。男性が書類を手に持って入ってきた。


「副社長、申し訳ございません。大至急こちらの書類にご署名をお願いできますでしょうか」


彼は書類に目を通し、サッと署名をした。


「中断して悪いね。続きをお願い」

「は、はい。秘書としての職務に就いたことはありませんが、高校生の時から父の会社でインターンとして、夏休みや冬休みに働いていました」

「例えば?」

「スケジュール管理、来客応対、会議やイベントの準備、書類や資料の作成などを行っておりました」

「それはもう完全に秘書の仕事だね。ご家族は、ご両親とお姉さんが二人……。ご家族のこと、仕事について簡単に教えてくれる?」


この質問、苦手だ。だってうちのみんなは、私と違ってエリートだから。

鼓動が速くなる。思わず、少しうつむいた。



「ち、父は医療機器の会社を経営しており、母は産婦人科医として下町でクリニックを開業しています」


胸の奥がズキンと痛む。有名企業の父親と医師の母親。その上、出来のいい姉たち。何もない自分が恥ずかしい。


「長女は大学を卒業後、アメリカで自分のアパレル会社を立ち上げました。次女も同じくアメリカで働いています」

「そうなんだ。次の質問なんだけれど、はっきりさせる必要があって。実は社長に対して、恋愛感情を持ち込む人が多いんだ」


不安そうに私を見つめている副社長。言いにくそうに続ける。


「このポジションには、仕事と私情を混同しない人を探していて。花村さんは秘書としての役割に専念できますか?」


なるほど、これがりりちゃんの言っていた3番目の条件か。

でも、興味がない。だって私は、あのお兄ちゃんのこと、今でも……


「その点については大丈夫です」

「うちの西園寺は、慶智の王子たちの一人で、独身イケメンの御曹司だよ?」

「すみません。私はイケメンの御曹司には興味がなくて。それに、昨日初めて慶智の王子たちのことを知りました」


ケロリと言った私に、副社長は思わず吹き出してしまった。


「ぷっ、あははは! 百合先生に聞いていた通りだ」