お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

俺の心の中とは裏腹に、晴天の日曜日、午前10時15分。
 
そろそろ風呂に行って支度をしなければならない。

鉛のように重い身体を起こし、宣告を受ける囚人のようにゆっくりと浴室へ進む。

熱めのシャワーと冷水シャワーを交互に浴びて、全身を目覚めさせる。シャワーを終え、かろうじて歯を磨いて身支度を整えた。
 



リビングのソファーに戻り、ただぼんやりと窓の外を眺めていた。


美愛ちゃんは本当に来てくれるだろうか?
俺は誤解を解くことができるだろうか?


この二つを繰り返し頭の中で考え巡らせている。

突然肩を揺さぶられ、ハッとする。仁がテイクアウトしたコーヒーを渡してくれ、大和がドライヤーを持ってきた。
 

こいつら、いつの間に来たのだろう?


「髪乾かさないと風邪をひくよ」


なんだろう、この感覚。以前、俺が美愛ちゃんの髪を乾かした時のことを思い出す。

大和に乾かしてもらいながら、コーヒーを啜るが胃にもたれる。ここ数日、アルコールばかり飲んでいたせいだろうか?

ホテルに向かう時間になり、ローテーブルの上にある車のキーを取ろうとしたところを仁が止めた。


「お前は運転できる状態じゃねーよ」

「今の雅は自転車にも乗るべきではないよね」

 
三人で仁の車に乗り込み、ホテル9(クー)へ向かう。





約束の1時間前に到着し、仁がホテル内にある老舗中華料理店の個室を予約してくれていたため、圭衣ちゃんを含め四人が集まった。

事前に仁がオーダーしてくれたおかげで、待たずに料理が運ばれてくる。みんなで分け合いながら軽くつまめる点心が中心で、その中には海鮮粥も含まれていた。

俺がここ数日、アルコール以外何もお腹に入れていないことを知っていて、注文してくれたんだな。こんな俺を心配し、支えてくれる大和と仁に感謝の気持ちでいっぱいになる。

みんなが席に着いたとき、圭衣ちゃんに頭を下げられ、謝罪された。


「雅さん、本当にごめんなさい。私が紫道を紹介したばかりに、こんなことになってしまって。私、紫道といよりには、雅さんの婚約者が妹だとは言っていないの。いよりは性格が悪いから、美愛ちゃんが私の妹だと分かっても、何かしらの嫌がらせをしたと思う。」

「頭を上げて、圭衣ちゃんのせいじゃないよ。それに、紫道君を紹介してもらえてよかった。指輪の出来が想像以上に良かったし」


俺は弱々しく微笑んだ。