お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜

ミッドタウンの中心にあるサクラスクエア。
地下駐車場を備えた、駅直結の複合施設だ。

オフィス専用のエントランスを抜け、エレベーターで7階へ向かった。

気のせいか、手のひらがじんわり湿ってる。思わず癖で、赤いベルと牛のチャームを服の上から握りしめた。




このフロアのには『伊集院法律総合事務所』と『株式会社BON BON』が入っている。

『BON BON』の受付で面接の旨を伝えると、男性が副社長室へ案内してくれた。


「失礼いたします」


一礼して入室し、席の横に立った。緊張気味に、少し震える声で挨拶をする。


「は、花村美愛と申します。本日はよろしくお願いいたします」


ローテーブルを挟んで向かいには、副社長の烏丸大和さんがいた。

一重の切れ長の目に、薄い唇。クールというよりは、仕事ができるシャープな印象を与えるが、人当たりは良さそうだ。


「初めまして、副社長の烏丸です。早速だけれど、花村さんの語学レベルはどの程度?」

「よ、読み書きはもちろん、リスニングもできるネイティブレベルと思っています」

「もしかして、全部? 確か5カ国語だよね?」

「はい、そうです」

「すごいな。うちはせいぜい2カ国語を話せる人がいるだけだよ。どうやって覚えたの?」

「父の仕事の関係で、幼い頃から日本、アメリカ、ヨーロッパを転々としていました」


ここで我が家の言語環境を簡単に説明した。

父はドイツ系アメリカ人で、祖母はイタリア人。家では常に日本語、ドイツ語、英語、イタリア語が飛び交っていた。


「そして、フランス語は数年間住んでいた際に覚えました」


彼は時折ノートパソコンを打ちながら、私の話を聞いている。

少しずつ私の緊張もほぐれてきた。


「ヨーロッパの人々は数カ国語を話せると聞いたことがあるけど、本当なんだね。次の質問だけれど、秘書の経験は?」