お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

バレーパーキングを利用し、そのまま横の入口から入り、エスカレーターを目指す。金曜日だからか、いつもより人が多く感じられる。
 
エスカレーターの直前で、正面エントランスから来たいより君に突然ハグされた。


「やめてくれよ、いより君」


圭衣ちゃんが紫道君を紹介してくれたとき警告された。いより君には細心の注意を払うようにと。彼は距離感と言動に問題があり、そのために、紫道君の顧客が離れていっているようだ。なんでも、その美しい女性のような見た目のせいで、カップルで訪れる男性との距離感が近すぎるため、何度も店で問題になったと。
 
確かに彼は俺にも、毎回ハグをしたり、恋人のように腕を組んだり。そのたびに不快に感じるので、やめるように注意してた。紫道君にも注意してもらっているが、彼は全く聞く耳を持たない。

一旦離れてエスカレーターに乗ると、彼が俺の隣に乗り込み、腕を組んできた。すぐにでも解きたかったが、後ろにも人がいたため、とりあえず2階のホールに着くまで我慢することにした。ホールに着くと同時に、彼の腕を振り払う。


「いい加減にしてくれ!」


いより君はクスクスと笑っている。そんな彼を放って、紫道君のジュエリーショップへ。



無事に婚約指輪を受け取り、いより君の問題について紫道君と話していると、凄みのある声で呼ばれた。


「雅、お前はどういうつもりなんだ!」


そこには、今まで見たことがない憤怒の形相を浮かべた仁が、仁王立ちして俺を睨みつけている。


「えっ? どうした、仁?」


訳がわからない俺の問いに、彼は一気に捲し立てた。


「お前、何をしているんだよ。人目を憚らずに他の女と抱き合ったり、腕を組んだりして! 姫ちゃんはそれを見て、泣きそうな顔をしてタクシーでどこかへ行ってしまったぞ!」

「ち、違う、誤解だって!」

「それに、お前、彼女に嘘をついただろう? 田島先輩と食事に行くって?」

「確かに嘘をついたが、それはすべて誤解だって」


必死の説明も虚しく、仁の怒りは収まらない。そんな仁に紫道君が詳しく説明してくれ、謝罪した。


「九条社長と雅さんのフィアンセが見たのは、きっと私のパートナーです。彼は他人との距離感や誤解を招く言動が多々あり、雅さんからも何度も注意を受けています。本当に申し訳ありませんでした」


落ち着きを取り戻した仁は、紫道君に尋ねる。


「ホテルにも、このショップに関する苦情が寄せられていてね。まさかと思うが、原因はすべて君のパートナーなのか? 婚約している男性顧客に言い寄っていると?」

「はい、そうです。」


仁は不愉快そうに大きなため息をついた。