お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

「美愛は英語、ドイツ語、フランス語、イタリア語を話すことができ、ジョセフの会社で秘書らしい事もしてきた。最後の『色目を使わない』という点についても、あなたなら問題ないでしょう。これまでどんなイケメンにも興味を示さなかったし、それにあなたは今でも初恋のお兄さんのことを思っているじゃない? だから、私は自信を持って推薦できるわ。 面接を受けてみない?」


先ほど失業したばかりの私にとって、願ってもないお話。


「その話ぜひお願いしたい」


間髪を入れず、食いつき気味に返答した。


「えっ、即決しちゃってもいいの? あなたのことだから、決めるのに最低三日はかかると思っていたわよ。」

「あはは、実はね、さっき失業して、新しい仕事を探さなきゃいけないんだ。だから、ぜひ面接を受けたいと思っているの。あっ、でも家族には内緒にしてもらえるかな? ようちゃんには後で電話するつもりだけど……」

「あら、そんな事情があったのね。もちろん、あなたの両親や圭衣には言わないから。とりあえず、早速今から連絡を入れるわ」


えっ、今⁉︎

毎回、りりちゃんの行動力には驚かされる。その後、順調に明日の面接が決まった。





帰宅して、BON BONからメールで送られてきた書類に記入し、返信した。これで履歴書を持参しなくてもよくなった。


四畳の部屋に備え付けられた幅の狭いクローゼットを開け、明日着るスーツを選ぶ。ありがたいことに、私の服はすべて姉の圭衣が作ったもので、洋服代が全くかからない。その中からダークグレーのスカートスーツを選び、インナーにはシンプルな白のブラウスを合わせる。靴とバッグは無難に黒にする。

今更だけれど、不安になってきたな。
もし上手くいかなかったら、どうしようか?
りりちゃんの顔に泥を塗ることになってしまう……

無意識のうちに、ベッドの横にあるサイドテーブルにある、丸い箱のフランス製キャラメルを1粒口に含む。

口の中いっぱいに広がる優しい甘さに癒されながら、今でも大切に持っている赤いベルと牛のチャームがついた長めのネックレスを、左手でしっかりと握りしめた。


「お兄ちゃん、お願い。明日の面接がうまくいきますように」