お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜

二日ぶりに帰ってきた部屋は、至る所にお酒の空き缶が散乱し、スウェットとスーツが無造作に床に脱ぎ捨てられていた。

胸が、少しだけ痛む。


「ごめん、今すぐ片付けるから」


バツの悪そうに、雅さんが服を拾い上げる。


「二人でやった方が早いでしょ」


リサイクル用の袋を手に取り、缶を拾い始めた。

こんなに飲んで……食事の形跡もない。


「雅さん……ご飯、食べてたの?」


「えっ? あ、いや……あんまり腹減ってなくて」

「そんな状態でお酒ばかり飲んでたら、体壊しちゃうでしょう」

「美愛ちゃんがいないと、俺は全然ダメなんだよ。情けないくらい」


少し困ったように笑う。


--ポンコツ。

仁さんの言葉が、ふっとよぎる……本当に、その通りだ。

でも、そんな雅さんも嫌いじゃない。

会社で見せる顔も。
優しく笑う顔も。
今みたいに、不器用なところも。

全部、好き。

……だから、もう迷わない。

さっき、あの場で言った言葉。あれが私の答え。

私は、雅さんと一緒にいたいんだ。


「あ、あのね……聞きたいことがあるの」


雅さんの手が止まる。そのまま私の手を取り、ソファーへ。


「いいよ。何でも聞いて」


真っ直ぐな目。


「全部、正直に答える」

「あのね……さっき言ったこと、全部本当の気持ちなの」


少しだけ、言葉を探す。


「でも、一つだけ……違うところがあって」

「どこ?」


優しく促される。


「わ、私……ずっと考えてたの」


視線を落とす。


「私が、雅さんに相応しいのかどうか」


言っていて、胸が苦しい。


「相応しくないから……家族に紹介してもらえないのかなって」


声が、自然と小さくなる。雅さんの手が、そっと頬に触れた。


「……ごめん。全部、俺のわがままだ」


低い声が耳に届く。


「俺が作った指輪を着けた君を、ちゃんと紹介したかった。家族にも、ずっと急かされてたし」


その言葉を聞いて、すっと胸のもやが消えていく。


「まだあるよね、聞きたいこと。」


見抜かれている。


「……」


言えない。でも、聞かないと。


「何でも答える。全部、ちゃんと話そう」


優しく、でも逃がさない彼の声。

……聞くのが怖い。

視線を上げると、なかなか言い出せない私を、雅さんが真っ直ぐ見つめていた。