お菓子の国の王子様〜指切りした約束から婚約まで〜花村三姉妹   美愛と雅の物語

プロポーズを受けてから3週間が経ち、もう11月になった。

あれから私たちはお互いの家族への挨拶や両家の顔合わせ、結婚式および披露宴について話し合っているが、まだ挨拶すらできていない。

一応、結婚式は内輪で3月に予定しているが、式場も未定。

雅さんは私の実家に何度も訪れており、アメリカにいるようちゃん以外の家族とも良好な関係を築いている。

私はまだ西蓮寺家に伺ったことがなく、唯一挨拶したことがあるのは京兄さまだけ。


私、西蓮寺家の人たちに、認められていないのかな?



雅さんは相変わらず忙しい。結婚式の予定がある前月の2月には、カフェBon Bonのオープンも控えている。

その上、最近私たちはすれ違いの生活を送っているため、少し不安になる。というのも、週末も含め彼が一人で出かけることが多くなったから。


今晩も10時半頃に帰宅し、今シャワーを浴びている。

キッチンで明日の準備をしていた私の横を通り過ぎたとき、微かに知らない香りが漂ってきた。普段香水をつけない私でも分かるが、あれは女性用の香水。花とバニラが混ざり合ったような、鼻につく甘ったるい香……

確か今夜は九条社長と会社で会って、食事をする予定だったはず。そして明日も遅くなると言われたな。

『コミュニケーションを大切に』と言われたけれど、聞けない。

なぜ?

どんな答えが返ってくるのか、怖くて聞けない。もしかしたら、私の考えすぎかもしれないけど。そうであってほしい。





次の日の夕方、退社する前に社長室に呼ばれる。


「社長、お呼びでしょうか?」


雅さんは机から立ち上がり、私の前まで来た。


「最近、時間が取れなくてごめん。もう少しで落ち着くから。夕飯は要らないよ。大和と一緒にご飯を食べに行ってくるから。その前に、少しだけ美愛ちゃんを充電させて」
久しぶりに抱きしめられて嬉しいはずなのに、心がざわつく。昨日の香りが尾を引いているのだろうか?


ねぇ、雅さん。本当は誰とどこに行くの?