お菓子の国の王子様〜指切りした初恋は御曹司の溺愛プロポーズへ〜

左隣の圭衣ちゃんは今にも怒りを爆発させそうな形相で、言い争っている二人を睨んでいた。

なんか、ドラマの茶番劇を見ているみたいだ。

右隣のようちゃんと目が合った。


「美愛はどうしたいの?」


彼女が小声で囁く。

ここに居たくない。何もしていないのに責められるのはもうたくさんだ。雅さんにも、もうウンザリ。

終わりにしよう……すべてを……


「すべて終わり、もうやめた」


悲しい笑顔で小さく呟いた私に、ようちゃんが頷いた。そして左を向いて、圭衣ちゃんに伝えた。


「ドレスは必要ないから。ごめんね」


驚愕している圭衣ちゃんをよそに、そのまま立ち上がった。仁さんにこの場を提供してくれたことへのお礼を述べ、副社長にもお礼を伝えた。そして明日退職届を提出することを告げ、素早く部屋を後にした。




ようちゃんとエレベーターを待っていると、雅さんと仁さんが駆けつけてきた。


「お願いだ。二人だけで話したい」


懇願する雅さんを見ずに、閉まったエレベーターのドアを見つめたままでいた。

今さら、何なの。


「姫ちゃん、俺からもお願いだ。雅と話してやってくれないか?」

「美愛、最後に話してみたらどう?」


そっとようちゃんに耳打ちされ、彼女を見つめる。しっかりと首を縦に振ったようちゃん--行っておいで、と言うように。




仁さんの配慮で社長室を利用させてもらうことになった。

数日ぶりに雅さんと二人きりになった。目の下のクマは、さっき見た時よりも近くで見るとさらに濃い。この数日でこんなにもやつれた彼を見るのは、心が痛んだ。


「金曜日、『ホテル9(クー)』で仁に呼び止められたんだ。あんなに怒っているあいつを見たのは初めてだった。どこから説明を始めればいいかな。

まず、俺と一緒にいた人について話そう。さっきの部屋で言い争っていた二人は恋人同士だ。金曜日に君が見た人も男なんだよ。彼らは男性同士のカップルなんだ」