隣人はだらしない‥‥でも

「どうぞ‥‥暑いので気をつけて
 くださいね。では‥ッ」


邪魔にならない場所に珈琲を置いた
後握られた手首に小さく体がハネた


どうしよう‥‥
今下手に跳ね除けると、珈琲が
溢れてしまう。


『少しだけ話してもいい?』


「‥‥はい。」


掴まれていた手首を離さないまま、
片手に珈琲カップを持った山岡さんは
そのまま2階へと続く階段を登り、
私をソファに座らせた。


淡いルームライトが照らす空間は、
明るすぎなくて表情が見えづらいから
私には寧ろちょうどいい


『さてと‥‥この間の話の続きを
 しようか。』


ドクン


対面に座るかと思いきや、隣に
腰掛けた山岡さんにバレない程度に
嫌な顔をしてしまう


なんで座るとこが沢山あるのに、
隣に座るんだろう‥‥


近すぎる距離に、少し間をあけて
ズレたいところだけど、きっとそれも
阻止されるかもっと詰め寄られるのが
落ちだと思われる。


「この間はありがとうございました。
 その‥‥眠ってしまったのに
 泊めていただいて。あ、服は洗って
 ありますのでお、お返ししますね。」



『ああ、いつでもいいよ。』


「こ、この前のフォトってもう
 決まりました?全部良かったです
 よね!また見せてください。」


『うん、いいよ。』



「山岡さんって」


『茅葵』


ドクン


突然右手を握られると、長くて少し
ひんやりとした指が私の指に絡められ
心臓が一気に早く動き出す


どうしよう‥‥
やっぱり私‥‥山岡さんといると
おかしくなる‥‥
逃げないと‥‥


「帰ります!!私用事が‥ッ」


立ち上がるのを阻止されたと思えば、
そのままソファに押し倒され、
見上げたそこに美し過ぎる山岡さんの
顔があり顔を横に背けた


『茅葵』


「ッ‥」


『俺のこと好きでしょ?』


ドクン


「な、何言って‥‥好きじゃない」


『好きだよ。だって‥‥もうずっと
 顔が、態度が、声がそう言ってる。
 それでもまだ違うって言うの?』


頬に山岡さんの唇が触れると、
驚いて咄嗟に目を瞑り、ゆっくりと
上を向くと、そのまま唇が塞がれた


優しく啄むようなキスに、最初こそ
両手を握りしめて抵抗したものの、
そこから伝わる安心感にそっと瞳を
閉じ受け入れた


今まで恋人としてきたキスが、
こういうものだと思ってきたのに、
この人とするキスはこんなにも温かく
気持ち良くなる