隣人はだらしない‥‥でも

細川‥‥さん。


さっきの態度といい、謝罪といい、
おかしいなとは思っていたけど、
改めて距離がスッポリ空いたような
不思議な感覚に何も言えなくなった


私落ち込んでる?
また名前で呼んでほしいとか?


これが普通の距離感なのだとは思うのに、今までが異常だったが為に、
不思議と落ち込んだ気持ちになる。



「‥‥ありがとうございます。
 ATMなら運転できるのですが、
 上司である山岡さんに
 運転させてしまいすみません‥‥」


狭い車内。


軽く手を伸ばせば簡単に触れられる
その距離が、今までで1番遠くに感じ、
振り絞った帰りのトーンがおかしく
なかったかとか、表情が変じゃ
やかったかなとか焦ってしまう


『気にしなくてもいいよ。
 今日は撮影で沢山勉強出来ると
 いいね。現場は多分かなり
 バタバタすると思うからよろしく』


「は、はい。」


言われた通りヒールの靴を履き替えて
フラットなパンプスに。
スカートも着替えてパンツスタイルに
変えて来た。


オシャレな山岡さんのアシスタント
としては全然オシャレではないけど、
迷惑をかけないように頑張ろう‥‥


車内で殆ど会話をすることなく、
撮影スタジオに到着すると、荷物を
トランクから運び出し、山岡さんの
後ろから着いて行った。


『こんにちは。
 FTFデザインの山岡です。
 今日はよろしくお願いします。』


大きなガレージ倉庫のような建物の
扉を開けると、中はとても綺麗で、
広々とした開放感のある空間に
緑が沢山置かれていて、カフェのような
雰囲気も感じられる


『山岡さんお待ちしてました。
 そちらは?』


『わたしのアシスタントの
 細川です。』


スーツを着た男性が、私の方を見て
ニコリと笑ったので、荷物を置いてから
頭を下げた。


「初めまして、細川です。」


『鵜飼です。今日のモデルの
 新田 梨沙(にった りさ)の
 マネージャーをしております。』


名刺を出され、慌てて鞄から自分の
名刺を取り出すともう一度頭を下げて
交換させて頂いた。


こういうことは前の会社でも嫌というほどやって来たからやり方を知っていて
良かったと思える


それよりも‥‥新田 梨沙って、
有名なモデルさんだよね‥‥。


生で芸能人に会えるなんて
思っても見なくて、急に緊張してきた