エリート狼営業マンの甘くてズルい魅惑の罠


見送りついでに立ち話でもしていたのか、20分ほど経った頃、玄関のドアがガチャリと開く。


「おかえり」


紫苑はクローゼットにダウンジャケットを戻した後、床で荷解きをする私の元まで近づいて来た。


「これ洋服?荷造りの時も思ったけど、女にしては随分と少ねぇな」

「うん。仕事と家の往復の毎日だったし、最低限オフィスでも使える服が何着かあればいいかなって」

「ふーん。ま、荷物が少ないのは有難てぇけど」


紫苑は寝室の収納の空きスペースを確認しながら、私がとりあえず畳んで積んでいた洋服を持ち上げた。


「これ、しまっていい?こっちのチェストは中空だから、お前が使っていいよ」

「ありがとう」


ウォークインクローゼットの中にあるチェストの空きスペースに私の衣類をしまい、とりあえず場所のない雑貨類もまとめて一時的に片付ける。

紫苑が手伝ってくれたおかげで、リビングにあった段ボールの山は一瞬でなくなった。


時刻は間もなく19時だ。

世間一般の夕飯の時間が近付き、私の体も常人通りに空腹を訴え始めた。


「風呂できてるはずだから入ってこれば?」

「え、でもその前に私、ご飯つく――」

「今日はいい。飯あるし。準備しておくからさっさと風呂済ませてきて」


キッチンに移動して手を洗う紫苑は、それ越しに「廊下の突き当り右奥。タオルは脱衣所。使ったら洗濯機」必要最低限の情報を示して冷蔵庫を開ける。


飯あるって、冷凍のデリでも買いだめしてあるんだろうか……?

そんな疑問を浮かべつつ、私は彼の厚意に甘えて、お風呂道具の一式セットを手に脱衣所へ向かう。


新築並みにピカピカの浴室には、白い浴槽によく映えた水色のお湯が張ってあって、最低限の物が壁に吊るして配置されていた。

収納のプロも顔負けの整頓術だな……。


明らかに質の良さそうなシャンプーとコンディショナー、トリートメント、ボディーソープ。

洗面台の棚に並んだ洗顔料や化粧水などのメンズコスメ一式もお高そうなブランドもので揃えられており、私なんかより余程美容に抜かりは無さそう。


って、なんだか他人様の愛用品をジロジロと物色するのもあまり褒められた行為とは言えないよね。

私は勝手な見物もそこそこに、これまた高級そうなふわっふわのバスタオルを1枚拝借した後着ていた衣服を脱いで、窓から夜景の見える優雅なバスタイムを楽しんだ。