エリート狼営業マンの甘くてズルい魅惑の罠


新宿駅に着いた頃。


「もしもし。――ああ、了解」


想太郎くんから到着の連絡を受けた紫苑は、夕方になりさらに人で混み合っている駅前を慣れた足取りで歩いて行く。

はぐれないようにそれを追う私は、その瞬間、突如目の前に現れた人影に進行を阻まれ急ブレーキをかけた。


「お姉さん1人?よかったら今からオレと――」


ニヤついた笑みを浮かべるその人の腕が伸びてきて、思わず後ずさった、そのとき。


「何やってんの」


その腕を私の代わりに振り払うようにして、そのまま私の手を引いたのは、少し先でUターンしてきてくれた彼だ。


「……お兄さん、キャッチ?悪いけど、俺たちこれから用があって」

「あ、ああ。はは。そっすか。残念っす。んじゃまたー……」


明らかにただのナンパ目的であったろうに、紫苑の美しすぎる微笑に恐れをなしたその人は逃げるようにその場を去って行く。


「ご、ごめん。ありがとう」

「悪い。俺も目離し過ぎた」


繋いだ手を離さずに、もう片方の手でそっと私の頭を撫でる彼に、顔の温度が急上昇した。


「置いてってごめんな。未來」

「だ、だ、大丈夫、です」

「なんだよ、ですって。――転ぶなよ」


私の手を引いたままゆっくりとしたペースで少し前を歩く紫苑の背中を上目遣いで見つめて、黙ってそれについて行く。


こんなにたくさんの人が行き交う夜の街でも、ひと際彼はかっこいい。

ただでさえ顔がド級に良すぎるんだから、これ以上心臓に悪いことはしないで欲しいものだ。


私じゃなかったら瞬殺ですよ。


私は彼に聞こえない程度にため息を吐いて、遠くからでも目に入る、今日からの仮住まい――あの超高層タワーマンションを目指した。