萌音の一番最初の記憶は、この世に誕生した時…じゃなくて。
もっともっと前、多分、お母さんのお腹の中に居た頃から始まる。
周囲は薄暗くて、狭くて、あったかかった。
音も声も、全部ぼんやりとしか聞こえなくて、その不思議で、でも安心出来る場所で。
萌音は何ヶ月も、ふわふわと漂っていた。
あれが子宮の中、ってことだったんだろうけど。
ちなみに、お母さんのお腹の中で、耳が聞こえるようになってからというもの。
お母さんが話す声が、萌音の耳にも届いていた。
だから、お母さんが毎日のように、萌音のいるお腹を撫でていたことも。
「元気に生まれてきてね」、「早く会いたいな」、「男の子かな。それとも女の子かな?楽しみだわ」などと、声を弾ませていたことも、萌音は覚えている。
多分お母さんは忘れてるだろうけど、萌音は覚えている。
萌音もあの時返事が出来たら、「元気だよ」、「もうちょっと待ってね」、「男の子じゃないよ。女の子だよー」と教えてあげたんだけど。
如何せん、声を聞くことは出来ても、言葉を返すことは出来なかったから。
それに、話し声は聞こえていても、言葉の意味までは分かっていなかった。
お母さんだけじゃなくて、勿論お父さんの声も聞こえていた。
時折、お母さんとは違う手の感触で、お腹を撫でているのが分かった。
お母さんより力強くて、でも優しかったあの手。
あの手が、お父さんだったのだ。
そして、お腹の中で、両親の声を聞きながらすくすく育った萌音。
思えば、あの頃が萌音の人生で一番幸せだったのかも。
だって、萌音はこの世に生まれることを待ち望まれていた。
誰からも愛されて、大切にされて、必要とされて…。
生まれた後、まさかあんなことになるとは、思ってもみなかった。
だから萌音はある日、その楽園から飛び出した。
お母さんに会いに行こう、お父さんに会いに行こうと思ったのだ。
きっと萌音が姿を見せたら、たくさん喜んでくれるに違いないと思って。
実際、その通りだった。
お母さんが、生まれたばかりの萌音を初めて抱き締めてくれた時のこと。
萌音は、今でも覚えている。
昨日のことのように覚えている。
お母さんは顔に玉のような汗をかき、疲れ果てたような顔をして。
それでも、腕を弱々しく伸ばして、萌音のことをぎゅっと抱き締めてくれた。
その時のお母さんの、至福の表情。
今でも、脳裏にその表情が思い浮かぶ。
そしてその後、分娩室の外で待機していたお父さんもやって来て。
ちっちゃな萌音のことを、しっかりと抱き締めてくれた。
勿論、その時の感触も、お父さんの嬉しそうな顔も覚えている。
お父さんとお母さんにとって、萌音は記念すべき、一番最初の子供だった。
萌音は、望まれて生まれてきたのだ。
あの時が萌音にとって、人生の幸福のピークだったと知っていたら、と。
後になって、何度そう思ったことだろう。
もっともっと前、多分、お母さんのお腹の中に居た頃から始まる。
周囲は薄暗くて、狭くて、あったかかった。
音も声も、全部ぼんやりとしか聞こえなくて、その不思議で、でも安心出来る場所で。
萌音は何ヶ月も、ふわふわと漂っていた。
あれが子宮の中、ってことだったんだろうけど。
ちなみに、お母さんのお腹の中で、耳が聞こえるようになってからというもの。
お母さんが話す声が、萌音の耳にも届いていた。
だから、お母さんが毎日のように、萌音のいるお腹を撫でていたことも。
「元気に生まれてきてね」、「早く会いたいな」、「男の子かな。それとも女の子かな?楽しみだわ」などと、声を弾ませていたことも、萌音は覚えている。
多分お母さんは忘れてるだろうけど、萌音は覚えている。
萌音もあの時返事が出来たら、「元気だよ」、「もうちょっと待ってね」、「男の子じゃないよ。女の子だよー」と教えてあげたんだけど。
如何せん、声を聞くことは出来ても、言葉を返すことは出来なかったから。
それに、話し声は聞こえていても、言葉の意味までは分かっていなかった。
お母さんだけじゃなくて、勿論お父さんの声も聞こえていた。
時折、お母さんとは違う手の感触で、お腹を撫でているのが分かった。
お母さんより力強くて、でも優しかったあの手。
あの手が、お父さんだったのだ。
そして、お腹の中で、両親の声を聞きながらすくすく育った萌音。
思えば、あの頃が萌音の人生で一番幸せだったのかも。
だって、萌音はこの世に生まれることを待ち望まれていた。
誰からも愛されて、大切にされて、必要とされて…。
生まれた後、まさかあんなことになるとは、思ってもみなかった。
だから萌音はある日、その楽園から飛び出した。
お母さんに会いに行こう、お父さんに会いに行こうと思ったのだ。
きっと萌音が姿を見せたら、たくさん喜んでくれるに違いないと思って。
実際、その通りだった。
お母さんが、生まれたばかりの萌音を初めて抱き締めてくれた時のこと。
萌音は、今でも覚えている。
昨日のことのように覚えている。
お母さんは顔に玉のような汗をかき、疲れ果てたような顔をして。
それでも、腕を弱々しく伸ばして、萌音のことをぎゅっと抱き締めてくれた。
その時のお母さんの、至福の表情。
今でも、脳裏にその表情が思い浮かぶ。
そしてその後、分娩室の外で待機していたお父さんもやって来て。
ちっちゃな萌音のことを、しっかりと抱き締めてくれた。
勿論、その時の感触も、お父さんの嬉しそうな顔も覚えている。
お父さんとお母さんにとって、萌音は記念すべき、一番最初の子供だった。
萌音は、望まれて生まれてきたのだ。
あの時が萌音にとって、人生の幸福のピークだったと知っていたら、と。
後になって、何度そう思ったことだろう。


