神に選ばれなかった者達 後編

絵里衣ちゃんは我が家で一番面倒見が良くて、世話好きで、明るくて、優しい。

学校でも、お友達がたくさんいるんだって。

絵里衣ちゃんは生まれてすぐ親に捨てられた子らしくて、実の両親の顔も名前も知らない。

そんな絵里衣ちゃんにとって、久留衣家のパパとママは、本当の両親も同然だった。

実際、この家に引き取られたのは、絵里衣ちゃんがまだ1歳かそこらの頃だったらしい。

そんな幼い時から一緒に暮らしてるんだから、彼女にとってこの家は、自分の実家なのだ。

そしてそこで一緒に暮らしている兄弟達は、本物の兄弟も同然。

彼女にとって、血の繋がりなんて何の障害にもならないのだ。

一緒に暮らしていれば家族。家族は皆大事。

だからこそ、下の子の面倒も率先して見る。

宿題を教えてあげたり、遊び相手になったり、時には相談相手になったりもする。

パパとママには言いにくいことでも、絵里衣お姉ちゃんには言える、ってこともあるらしい。

萌音には分からないけど。

そんな絵里衣ちゃんは今、高校2年生。

つまり、萌音と同い年なのだ。

通っている学校は違う。

性格が良い上に頭も良い絵里衣ちゃんは、萌音の学校よりもずっとレベルの高い、私立の女子校に通っていて。

しかも、そこでも常に、クラスで一番の成績を取っているらしい。

学校でも人気者で、友達がたくさんいるんだって。

…萌音とは大違い。

「あ、萌音ちゃんお帰り」

その絵里衣ちゃんが、帰ってきた萌音を見て声をかけてきた。

「ただいま…」

挨拶を返しはしたけれど。

萌音は、昔から絵里衣ちゃんのことが苦手だ。

兄弟皆に好かれていて、パパとママにとっても自慢の子である絵里衣ちゃんだけど。

絵里衣ちゃん自身も、同い年の姉妹である萌音と仲良くしたいと、これまで何度も歩み寄ってくれた。

一緒に遊ぼう、一緒に宿題をやろう、一緒に絵本を読もう…。

ここに来たばかりの頃、絵里衣ちゃんは何度もそう言っては、萌音と仲良くなろうと努力していた。

パパとママも、同い年の萌音と絵里衣ちゃんが打ち解けて、仲良くすることを望んでいるようだった。

でも、駄目だった。

萌音は、絵里衣ちゃんのことが好きになれない。

最初に会った時から、ずっとそうだった。

だけどそれは、決して、絵里衣ちゃんが悪い訳ではない。

悪いのは萌音だ。

卑屈で、頑なで、心を開くことが出来なかった萌音のせい。

何年も経った今となっては、絵里衣ちゃんはもう、萌音と無理に仲良くなろうとはしなかった。

適度に距離をおいて、他の兄弟姉妹と同じように接してくれている。

その絵里衣ちゃんの気遣いが、またしても萌音の苦手意識を強くしている原因なのである。