神に選ばれなかった者達 後編

正直、辛いなって思うことはある。

本当の自分じゃなくて、「作られた女子高生」を演じるのは。

そういう面倒臭いの、全部投げ出したいなーと思う時もある。

でも、しょうがないじゃん。

簡単には逃げられないんだからさ。

私だけじゃない。皆、何かしら強がってるものでしょ。無理してるものでしょ。

多少無理してでも、クラスメイトと上手く付き合う為には、致し方ないことでしょ?

疲れたなーって思いながら、頑張って「自分」を演じてるものでしょ?

そう思って、毎日仮面を被りながら生きている。

…だからこそ、響也くんが眩しく見えるのだろう。

彼は決して、自分も、他人も偽らないから。

自由に生きている彼が…そのせいで人から顰蹙を買っても、友達が出来なくても…。

いつだって自分らしく、堂々としている彼のことが羨ましい。

「ほんと、ルトリアくんって格好良いよねー。みらくが夢中になる気持ちも分かるよ」

「う、うん…。そうだよね…」

「うちのクラスの『あいつ』とは大違いだよ。ねぇ?」

「あはは。言えてる」

…!

女友達二人が、『あいつ』と言うと。

『あいつ』にも聞こえたのだろう。

彼はびくっと反応し、怯えたような表情でこちらを見た。

それを分かっていながら、私の友達はわざと声を大きくして言った。

「『あいつ』、ほんとキモいもんね。ルトリアくんと同じ人間とは思えないくらい」

「まったくだわ。何でまだ学校来てるんだろう。不登校にでもなってくれれば良いのに」

「ね。クラスの誰も『あいつ』の顔を見たくないってこと、自覚すれば良いのに」

次々と。『あいつ』と呼ばれた彼の心を抉るかのように。

面と向かってではなく、背中を向け、ちらちらと彼の方向を見ながら。

厭味ったらしいその糾弾に、耐えられなかったのだろう。

彼は身を縮こませ、俯いた。

何一つ言い返さなかった。

とっくに言われ慣れた、それらの言葉。

…そう、いつものことだ。これは。

『あいつ』と呼ばれる彼は、私達と同じクラスの男子生徒。

臆病で人見知りで、内気な性格をしていた。

そのせいで、毎日のように『あいつ』は、クラスメイトにこのような陰口や悪口を言われ。

そして、毎日陰湿な嫌がらせを受けていた。

『あいつ』は常に、『あいつ』とだけ呼ばれている。

名前を呼んでもらうことは決してない。

まるで、名前が存在していないかのように。

こういう露骨な陰口は、今に始まったことじゃない。

毎日のように言われていることだから、彼ももう、特に傷ついていないかのように見える。

私もそう思っていた。

どんなに悪口を言われても、全然気にしてない。全然傷ついていないって。

…でも、そんなはずがない。

嫌なことを言われて、傷つかずにいられるはずがないのだ。