神に選ばれなかった者達 後編

「李優…。誰かに苦情入れられるようなことしたの?」

「…さぁ…。全然、自覚がないんだけど…」

だよね。李優、良い人だもん。

褒められこそすれ、クレームを入れられる理由はないはずだ。

理由本人に言えない苦情があるなら、代わりに萌音に言ってくれると嬉しいな。

萌音から、理由に伝えてあげるから。

「もしかしたら…『体臭が気になります』とか…。『背中にゴミついてますよ』とか…」

「そういうことなら、口で言ってくれよ…。別に怒らねぇから…」

「いやぁ。背中にゴミはともかく、体臭について文句は言えないでしょう」

体臭…。

…李優、臭うの?

萌音は、李優にぴとっ、とくっついた。

「うわっ、ちょ、萌音?」

「くんくん…。くんくん…ふんふん…」

「おい、何嗅いでるんだよ」

だって、李優の匂いが臭いって文句言われたら、萌音、嫌なんだもん。

いつもの通り、李優の匂いがする。

萌音の一番好きな匂いだ。

「大丈夫。萌音、李優の匂い好きだよ」

「あ、そ、そう…」

「そりゃ萌音ちゃんは恋人だから、体臭なんて気にならないだろうよ」

えっ、そうなの?

他の人は気になるんだろうか。

「でも、李優先輩は別に…。不快な匂いを感じたことはありませんけどね」

と、小羽根君。

だよね、そうだよね。李優、良い匂いだよね。

「むしろ、匂いで苦情を入れられるとしたら…『Black Dark Perfume』の香水を使ってる唱先輩の方じゃないですか?」

「えっ?僕の匂いの何処が問題なんです?最高に良い香りでしょう?」

自慢げに言う唱君の匂いを、ふんふんと嗅いでみると。

…何だろう。

「もわもわもわ〜…みたいな匂いがする」

「これは『Black Dark Perfume』のオリエンタル・ノート3番、『Eternal Black』の香りです。小羽根さんにサンプルをもらったので」

ほえー。よく分かんないけど格好良い。

上手く言えないけど、一度嗅いだら忘れられない匂い。

「まぁ、確かに李優君が臭いと思ったことはないしな…。…じゃあやっぱり苦情の手紙じゃないだろ。ラブレターだろ」

「知らねーけど…。…開けてみれば良いんじゃねぇの?」

「そうだな。よし、今すぐ開封しろ」

「…何で俺宛ての手紙を、何が嬉しくて皆の前で公開しなきゃいけねーんだよ…」

「え?だって面白そうじゃん」

「…」

まほろ君、とっても素直だね。

素直過ぎて清々しいって言うか。