神に選ばれなかった者達 後編

掲示板を閉じてから、スマホを鞄の中に入れ直し。

再び歩き出して、しばらくしてから。

ふと、よく知っている人の気配がして、萌音は振り向いた。

そこにいたのは。

「おはよう、萌音」

「李優…。…おはよう」

私の、一番好きな人。一番大切な人。

佐乱李優。

昨夜、一緒に火葬場…改め、病院を探索した、あの李優である。

夢の中では、天使の翼が生えている李優だけど。

現実では、彼の背中に翼はない。

凄いでしょ?

他の生贄の皆は、『処刑場』以外で現実での交流はない。

唯一、空音兄妹だけは例外だけど。

それ以外の皆は、それぞれが別の場所に生まれて、別の場所に育っている。

何処に住んでいるのかも、よく知らない。知ろうとも思わない。

だが、李優は別だ。

萌音は現実でも、夢の中でも、李優と一緒にいる。

朝も昼も夜も一緒なんだよ。

これってもう、同棲生活していると言っても過言じゃないよね?

まぁ、夢の中ではゾンビとか忍者のバケモノと戦ってるんだけど。

朝になって、現実で李優の顔を見る時。

夜になって、夢の中で李優の顔を見る時。

これほどホッとする瞬間はないよ。

「今日は良い天気だねー、李優」

「あぁ、そうだな…。って、それどころじゃないだろ」

え?

「それどころじゃない…?」

「もっと重要なことがあるだろ」

重要なこと…。うーん、そうだな…。

「…今日、小テストかなんかあったっけ?」

「いや、それじゃなくて…。…いや、小テストもあるけど…」

「えっ、あるの?」

今、結構適当に、当てずっぽうで言っただけなんだけどな。

本当にあるの?何の教科だっけ?

「お前な…。小テストの日程くらい把握しとけよ」

「覚えてる、覚えてるよ。…えーと、数学だっけ?」

「…古典の単語テストだよ」

おー、古典だったかー。

「そっか。李優は偉いねー、ちゃんと覚えてて…」

「あのな…。ちゃんと勉強しとけよ」

「えへへ」

「笑って誤魔化そうとするな」

大丈夫、まだ時間あるよ。

学校着いたら勉強始めるから。それできっと大丈夫。

いざとなったら、李優に教えてもらおっと。

李優は優しいから、頼めば、何だかんだ言いつつ教えてくれる。

「そうじゃない、萌音。はぐらかすな。…『処刑場』のことだよ」
 
李優が心配しているのは、現実での出来事じゃなくて、夢の世界での出来事だった。

あぁ、うん…。そっちも大事だよね。

特に李優は、『処刑場』でリーダー的役割を引き受けているから。

人一倍、責任感が強いのだ。

そういう点も、萌音とは大違いだね。

「お前も聞いただろ?あの場所が病院だって…響也から」

「うん、言ってたね」

「それに、建物が四階建てだってことも…」

うん、それも言ってた。