神に選ばれなかった者達 後編

「嘘だろ、こいつら…。まだ生きてるのに燃やしてるのか…!?」

李優が、吐き気を堪えるかのように口元を押さえて、そう言った。

「…そうみたいだね」

さすがに見ていて気分が悪いけど。

この断末魔の悲鳴を聞く限りは、そうなんだろうね。

死体だと思ってたけど、単に意識を失っていただけの人もいたんだ。

その人達が、生きたまま窯に入れられて。

じっくりと身体を焼かれる痛みに、思わず意識を取り戻して。

このままじゃ殺されてしまうと気付いた人々が、自分はまだ生きているから、どうか殺さないで欲しい、誰か気づいてここから出して欲しい、と。

人生で最期の、懸命の悲鳴を上げている。

「これ…この、蓋を開ければ良いのか…!?」

李優は血相を変えて、窯の蓋に飛びついた。

しかし、

「熱っ…!」

窯の蓋にまで熱が伝わり、まるでフライパンを触っているかのような熱さになっていた。

とても、素手では触れられそうにないね。

「な、何か開けるもの…。火箸とか…」

「…李優…」

「何やってるんだよ、萌音…!?急いで、この窯を…」

「…開けてどうするの?」

「…え?」

李優、君は本当に人が良いね。

困っている人を見つけたら、相手が誰であってもすぐさま助ける。

君は本当に優しい人だよ。…萌音と違って。

「開けて、改めて絞め殺すの?撃ち殺すの?確実に息の根を止めて、その後また燃やし直すの?」

「…」

「李優、この中にいるのは人じゃない。バケモノなんだよ」

焼かれているのが、もし普通の人間だったなら。

萌音だって、頑張って助けようとしたかもしれない。

でも、この中にいるのはバケモノだから。

さっき、そこの死体置き場で見た女の人の死体。

あれらはいずれも夢の中のバケモノであり、この窯は、萌音達の代わりにバケモノを焼き殺してくれているのだ。

むしろ萌音達は、そのことを喜ばなければならないのだ。

「これまで萌音達が殺してきたバケモノも、こいつらと一緒なんだよ」

「…あぁ、分かってる」

李優は、もう窯の蓋を開けようとはしなかった。

黙って…窯の中から漏れ聞こえてくる、断末魔の悲鳴を、ただ聞いているだけだった。

…助ける必要はない。

こいつらは、萌音達の敵なんだから。

いくら、姿形が人間に…人間の女の子に似てるからって。それは人間じゃない。

ここは夢の中で、この窯の中にいるのはバケモノなのだ。

「…ごめん、萌音…」

「…ううん。李優は悪くないよ」

李優はただ、誰にでも優しいだけだから。

…やがて、断末魔の悲鳴は掠れ、か細くなっていき。

…そのまま、聞こえなくなっていった。