神に選ばれなかった者達 後編

窯には蓋がしてあるのに、近くに寄ると、凄まじい熱気が立ち込めていた。

凄く暑い…。…真夏の車の中にいるみたい。

窯の外でさえこんなに暑いのに、窯の中は一体何度になっているのか…。

「ここで、死体の処理をしてたのか…」

李優は、その部屋をぐるりと見渡していた。

幅はそれほど大きくないけど、奥行きだけは深そうな窯が五つもある。

その窯の中に、入るだけ、ありったけの死体を詰め込み。

それを焼いて、骨にしているのだ。

いくら窯が五つもあって、ありったけ詰め込んでも、それ以上に死体の数の方が多い。

だから死体の焼却が間に合わず、仕方なく簡易ベッドをいくつも並べて、そこに火葬待ちの死体を安置していた…。

…ってことなんだろうな。多分。

ふーむ、成程…。

「…じゃあ、ここは火葬場なの?それともお葬式をするところ?」

「葬式…はしてないだろ?ただ焼いてるだけで…」

あ、そうか…。

お坊さんがなむなむ言ってる訳でも、皆で棺桶に花を入れる訳でもない。

それどころか棺桶なんてなくて、そのまま、生身のまま荼毘に付されている。

ってことは、ここは火葬場なのか…。

その時点で私と李優はまだ、ここが病院だということを知らなかった。

だから、死体が焼かれているのを見て、火葬場だと誤解したのだ。

でも、普通病院に火葬場がそのまま併設されてる、とは思わないでしょ?

「そっか…。これまでには一度も、」

と、萌音が言いかけたその時。

「ァ…ァヴァァァア…」

!?

何処からか、呻き声が聞こえてきた。

生きている者は、萌音達以外誰もいないと思ってたのに。

萌音と李優は、慌てて声のした方を振り向いた。

李優は、さっき敵から奪った拳銃を向けた。

…しかし。

萌音達が振り向いたのは、窯だった。

分厚い蓋が閉められた、窯。

その窯の中から、くぐもった呻き声が漏れていた。

「ィ…ィッツア…。ィィィッツァァァァア!」

…なんか言ってる。叫んでる。

更に、その声は一つだけじゃなかった。

その声に呼応するように、別の窯からも呻き声や、叫び声が聞こえてきた。

「ァァァ!…ェェテケ…!ゥゥスァァァタ…」

「ィィィィツア!ィィィツッツァァァア!」

「ェェェェティィィシァァァダ、ダァァダ!」

…阿鼻叫喚の様相を呈している、という状況は、きっとこういう状態なんだろうね。