神に選ばれなかった者達 後編

じめじめ、じっとりした広い部屋を、李優と二人で奥に向かって歩いていく。

…すると。

「…うわぁ…」

「ベッドがいっぱいだねー」

薄暗い部屋の中には、窮屈そうな小さい簡易ベッドが。

窮屈そうに、ずらりと並べてあった。

それ自体は、別に何とも思わない。

「何が『うわぁ』なの?李優」

「いや…だって…これ、全部死体だろ?」

「うん、多分ね」

ここに置いてあるベッドは、生きている人の為のものじゃなかった。

単なる死体置き場だ。

死体は窮屈な場所に寝かされていても文句を言わない。

暗くてじめじめしてて嫌だ、なんて言わない。

死体なんだから。

どんな扱いをされようと、死んだ後なら関係ない。

試しに、萌音は近くにあったベッドに歩み寄り。

顔の上にかけられた、黒い布を取り払った。

すると、そこには。

顔がぐちゃぐちゃに歪んだ誰かが、物言わぬ姿になって横たわっていた。

うーん。この人も死体みたいだね。

「お、おい…萌音、いちいち見るなよ…」

李優は、ぞっとしたような表情で、その死体を遠目から見下ろしていた。

うん。別に萌音も、死体をまじまじと見物する趣味はないんだけど。

でも、ちょっと気になったことがあって。

このぐちゃぐちゃになった顔…。

…試しに、今度はその隣の死体を確認する。

この人もそうだ。顔がぐちゃぐちゃになってる。

その隣の死体は、顔は綺麗だったけど、両腕がなかった。

その向かい側の死体は、顔は綺麗だし腕もあるけど。

背中に、巨大な瘤みたいなものが出来ていた。

その瘤がしぼんで、しわしわの皮膚が垂れ下がったみたいになってる。

…ふーん…。

じゃ、今度はその横の死体を確認、っと…。

「お、おい萌音…。見るなって…」

「李優、見て」

「見たくないんだけど…」

「良いから、ほらほら。そんなに怖くないよ」

「そんなに、って何だよ…。ちょっとは怖いってことなんじゃないか」

とか言いながら、李優は恐る恐る、その死体を見つめた。

何だかんだ言いつつ見てくれるところ、好き。

しかし、李優は。

「うわっ…」

見たのを後悔しているかのように、李優は顔を押さえて俯いてしまった。

「…大丈夫?」

「…うん、まぁ、大丈夫…」

その死体は、顔がバラバラだった。

目のところに耳がついてて、耳のところに口がついてて、鼻のところにぎょろっとした目玉が一個だけついてて。

おでこから歯が生えてて、顎のところに穴が二つ。

その穴から、じゅくじゅくした黒い粘液みたいなものが滴っていた。

皮膚は鱗みたいにひび割れて、そのひび割れからも、黒い粘液が滲んでいる。

それから、まるで獣みたいに、顔中に細くて黒い産毛がひょろひょろ生えていた。

凄いね。

顔のパーツ全部引っ剥がして、適当にくっつけたみたいだ。