神に選ばれなかった者達 後編

「ともかく、傷の手当をしないと…」

と、李優。

「ほら、腕出してみろ」

「大丈夫だよ、李優。痛いけど、血はあんまり出てないみたいだし…」

「良いから、早くしろ」

珍しく、ちょっと強い口調で言われた。

…はい。

萌音は、素直に上着を脱いで、袖をまくり上げた。

すると、手首から二の腕辺りにかけて、ヒビが入ったみたいな、無数の赤い亀裂が。

まるで、ガラスを落っことしたみたい。

うわー…。自分で思ってるより気持ち悪いね、これ。

「っ…」

あまりのグロテスクな傷口に、李優も言葉が出ないようだった。

「…ごめんね、気持ち悪いもの見せて」

「…いいや、謝るのは俺の方だ…。こんな傷を負うまで、助けてやれなくて…」

別に、李優は何も悪くないのに…。

それに、一発拳銃を掠っただけだよ。

李優は淡々と、自分の服の裾を裂いて、それを私の腕に巻いて手当してくれた。

お粗末な手当だ、って?

夢の中じゃ、このくらいのことしか出来ないんだよ。

傷の手当てをするより、一回死んじゃった方が早いからね。

「のぞみがいてくれたら良かったんだけどな…。今はこれくらいしか出来ない」

「充分だよ。…ありがとう」

お陰で、ちょっと痛みがマシになったような気がする。

よし、立ち上がれそう。

「これで頑張れる気がするよ、李優」

「そうか…。頑張るのは良いけど、お前、その手は大丈夫か?」

「?今、李優が手当してくれたよ?」

「そっちじゃなくて…。それ、指折れてないか?」

指?

自分の手を見下ろしてみると。

手のひらや指先や爪に、擦り傷や痣が出来ている。

その上、右手の小指が変な方向に曲がっていた。

あれー…。

なんか痛いなー、痛いなーと思ってたら、こんなになってる。

「さっき、忍者をボコボコに殴っちゃったから、それかな…」

人を殴るのって、殴られた方は勿論だけど、殴る方も結構痛いんだよ。

夢中でボコボコになるまで殴っちゃったから、自分の手もそれなりのダメージを負ってしまったらしい。

萌音、さっきの戦いだけで、意外とボロボロになっちゃってたんだね。

「ったく、お前は…。もう少し自分の身体を省みろっての…」

呆れて言いながら、李優は手のひらも手当してくれた。

ありがと。

「大丈夫だよ。一回死んだら治るし」

「死なないように済む努力をしろよ」

ごめんなさい。

「…まぁ、でも遅れて来た俺が悪いな。ごめん」

「李優は悪くないよ」

それよりも。

「李優、何処にいたの?隠れてたの?」

「あぁ…。少し、周囲の様子をうかがってたんだ。そうしたら、さっきお前が殺したそこの二人が、ストレッチャーを運んでるのが見えて…」

あ、李優もあいつら、見たんだ。

でも李優は、すぐさま襲い掛からず、様子を見てたんだね。

冷静で偉いね。

「距離を取りながら、後ろをつけてきたんだ」

「そっか…」

お陰で合流出来たんだ。結果オーライだね。