神に選ばれなかった者達 後編

…その時だった。

「…!」

さっきバケモノ忍者が入ってきた部屋の入り口付近から、微かな足音が聞こえてきた。

萌音は死体漁りをやめて、すぐさま拳銃を構えた。

また来た。おかわりかな?

でも、こっちには既に武器がある。

誰か入ってきたら、これをお見舞いしてやる。

…しかし。

「…うわっ!?」

「あれっ?」

足音が近づいてくるなり、拳銃の銃口を向け。

躊躇わずに引き金を引こうとした、その瞬間。

それがバケモノ忍者じゃなくて、萌音のよく知る人物だということに気づいた。

そして、すんでのところで何とか、引き金を引くことを思い留まった。

…あ、

…危なかった。

「も、萌音…!お前、ここに居たのか…!」

「…李優…」

李優だ。

萌音の恋人の、佐乱李優。

背中に天使の翼が生えた、萌音の一番大切な人。

…なんだ、李優だったんだ。

ようやく、萌音は拳銃を下ろした。

代わりに、まだ自由に動く右手で、李優のほっぺをむにっ、と触った。

むにむに。やわやわ。ふにふに。

うーん。もっちもち。

「…何やってんの?」

李優、真顔。

「本当に李優なのかなって…。確かめてみようと思って」

もしかしたら、バケモノが李優のフリしてるだけかもしれないでしょ?

もしそうだったら困るから、本物チェックをしてる。

「…あ、そう…。…で、どうだった?」

「うーん…。このもちもち加減は、やっぱり李優…?」

「…心配しなくても、本物だよ」

そっか。良かったー。

…強力な拳銃を手に入れるよりも、李優が傍に来てくれる方が安心するね。

「…はぁ…」

「お、おい。どうした?」

思わず、萌音はその場に座り込んでしまった。

…あれ、どうしよう…。何だか力が抜けちゃった。

「萌音…お前、怪我してるのか…!?」

萌音に駆け寄ってきた李優が、血相を変えてそう聞いてきた。

「うん…。でも、腕だけだよ」

「でも、お前…全身血まみれじゃないか」

あぁ、これ…。

「これは返り血だよ」

「…!もうバケモノを倒したのか?」

「うん。…あれ」

萌音は、床に転がっている二つの死体を指差した。

「…何だ、あいつら…。黒子みたいな格好して…」

「よく分かんない。バケモノ忍者だと思うよ」

「…忍者ではないだろうけど…。…それっぽい格好だな」

…でしょ?

新しいよね。忍者のバケモノだなんて。

手裏剣を使うのかと思ったら、拳銃を使ってきてびっくりだよ。