神に選ばれなかった者達 後編

バケモノとお喋りする趣味はない。

早く終わらせよう。

ここで何か武器があれば、それを突き刺すなり殴りつけるなりするんだけど…。

残念ながら、今の萌音に武器はない。

ならば、出来る手段は限られる。

徒手空拳で倒すのみ。

萌音は、その忍者のお腹を思いっきり蹴りつけた。

このバケモノが鋼鉄の身体を持っていたら、怪我をしたのは萌音の方だっただろう。

しかし。

「ッゥグ…!」

萌音の渾身のキックに、忍者のバケモノは呻いて、お腹を押さえて蹲った。

不思議と蹴りつけた時の感触は、普通の人間と変わらなかった。

何だ。意外と柔らかい。

じゃ、遠慮する必要はなさそうだ。

蹲ったバケモノに、更に追撃を仕掛ける。

思いっきり突き飛ばして、馬乗りになって殴りつける。

素手で、何度も、何度も。

容赦なんてする必要はなかった。

パンチが一発めり込む度に、ドカッ、バキッ、と骨が砕け、折れる音がした。

あまりにも生々しく。

そして、今ではもう慣れっこの感触だった。

殴る度に血飛沫が舞い、バケモノの呻き声が漏れた。

殺さなきゃ、殺されるのはこっちなのだ。

ならば、何を躊躇う必要があるだろう。

何度か渾身のパンチを食らわせると、そのバケモノ忍者は意識を失ったようだった。

意外と軟弱なんだな。

これなら勝てそうかも?

しかし、一筋縄では行かなかった。

「ロレナハラカノモノソ!」

最初に突き飛ばした、一匹目のバケモノ忍者が。

ふらふらしながら立ち上がって、こちらに拳銃みたいなものを向けていた。

あ、ヤバいかも。

咄嗟に横に避け、躱したつもりだったが。

ヒュッ、という音がして、萌音の左腕を掠めた。

何、今の間抜けな音。

もしかして、あれが拳銃の発砲音?

「ぐっ…」

予想以上の鋭い痛みが突き抜けて、萌音は、思わず銃弾の掠めた左腕を押さえた。

…僅かに弾が掠めただけなのに、萌音の左腕はひび割れたガラスの花瓶のように、亀裂が入っていた。

…成程。そういう武器なんだね、それは。

ちょっとでも掠めたら駄目なんだ。よく分かったよ。

こうやって学びを得ていくんだね。

…だけど、諦めるのはまだ早い。

まだ、左手一本が使い物にならなくなっただけなのだから。