神に選ばれなかった者達 後編

不味いな。早速バケモノが来ちゃったか。

まだ武器、見つかってないんだけどな。

しかし、バケモノは待ってくれない。

段々と、こちらに足音が近づいてくる。

こうなったら、仕方がない。

萌音は、段ボール箱などのガラクタ置き場に、身を伏せた。

そのまま待機。

すると。

ガラガラと、ストレッチャーを引いてやって来る人影が見えた。

…あいつか。

その姿を捉えるなり、萌音はすぐさま飛びかかった。

「…!?」

突如現れた萌音の奇襲に、バケモノ達は驚愕の眼差しを向けた。

多分驚いた顔をしてるんだろうけど、よく見えない。

だってそのバケモノは、全身黒い服を着て。

忍者みたいに、目だけを出していたから。

何これ。黒子…?やっぱり忍者?

まぁ、どっちでも良いや。

味方じゃないってことは、すなわち敵ってことだ。

ならば、容赦をする必要はない。

他の生贄の皆だったら、バケモノを見つけたら、まずは隠れて様子を伺うところだろう。

でも、萌音は違う。

萌音は、影に隠れて様子見、なんてことはしない。

敵を見つけたら、すぐさま刈る。

倒せる敵は、倒せる時に倒す。決して見逃しはしない。

向こうが奇襲してくるなら、萌音も同じことをする。

相手が何だろうと関係無い。

返り討ちに遭って死ぬことも、勿論ある。

必ずしも勝てる訳じゃないならね。

でも、別に構わない。

こちらには「死に戻り」があるのだ。

何度死んでも蘇って、再び戦うチャンスを得られる。

バケモノの命は一回しかないけど、萌音の命は無限だ。

バケモノを一回倒す為に、萌音は何回死んだって構わない。

なら、死ぬことをいちいち恐れる必要はない。

何度でも戦って、戦って、そしていつか敵の弱点を見つければ良い。

無限に残機のある死にゲーだと思えば、それほど酷いルールだとは思わない。

だから萌音は、いつだって恐れない。

近づいてきた足音は二つ。

ストレッチャーを運んできた二人の忍者。

それから、ストレッチャーに横たわっている一体。

計三体の敵が、萌音の前に立ち塞がる敵だと判断。

萌音はまず、ストレッチャーを運んでいた一体に、思いっきり体当たりを食らわせた。

萌音渾身のタックルに、忍者のバケモノは吹っ飛ばされ、その場に転倒。

その間に、もう一体と退治する。

「ダノモニナナ!?」

そのもう一体の忍者は、何事か叫んでいたが。

ごめん。ちょっと、何言ってるか分かんないや。

萌音、バケモノ語は分からないんだ。