神に選ばれなかった者達 後編

「…」

…気がつくと、俺は見慣れた天井を見上げていた。

…あぁ、俺は夢から覚めたのか。

そして、現実に戻ってきた…。

…いつぶりだろうな。

多分、一月も経っていないはずだが…。何週間も眠っていたら、浦島太郎の気分だな。

果たして俺は、まだ学校に籍があるのだろうか。

サボり過ぎて退学、ってことになっていなければ良いのだが。

…いや、それならそれで良いのかもしれないな。

どうせ、俺は価値のある人間にはなれなかった…。

「…っ、う…」

何はともあれ、まずは起き上がろうと思ったのだが。

身体に、巨大な鉛をつけられている気分だった。

夢の中でも、起きてしばらくは萌音に背負ってもらわなければ動けなかったが。

現実は、その比じゃない。

腕も脚も、自分のものとは思えないくらいに重く。

ベッドに手をついて起き上がることさえ、ままならない。

結果、ベッドの上でイモムシみたいに、醜く身を捩らせることしか出来なかった。

しかも、たったそれだけのことで、激しい運動をした後のように息が上がる。

…これは酷いな。

予想以上に筋肉が衰えている。

寝たきりの老人が毎日どんな思いをしているのか、少し分かったような気がする。

過酷だ。

しかし、何としてもまずは起きなければならない。

ベッドの上で、起き上がることに格闘していると。

俺が醜く身を捩らせている音が、部屋の外まで聞こえたのだろうか。

それとも、人の動く気配を察知したのか。

「…響也兄ちゃん…?」

同居している従兄弟の眞沙が、部屋の扉を開けた。

そして、ベッドの上で身を捩っている俺を見つけ。

「…!響也兄ちゃん…!」

感極まった声を出して、駆け込んできた。

眞沙の顔を見るのも、随分久し振りだな。

現実で、まだ俺のことを覚えている人がいたんだ。

そのことに、妙にびっくりしてしまった。

「良かった、目が覚めたんだな…!」

「あ、あぁ…」

久し振りに、現実で声を出した。

喉の風邪を引いている時のように、掠れたガラガラの声だった。

これは醜い。

しかし、感極まった眞沙は、そんなことはまったく気にしなかった。

「良かった、本当に良かった…!響也兄ちゃん、いきなり目を覚まさなくなったから…」

「…」

「医者に診てもらっても、原因が分からないって言われて…」

…だろうな。

まさか、夢の中で殺されているせいだ、なんて。医者に分かるはずがない。

このメカニズムは、未だに俺達生贄にも分からないのに。

「でも…目を覚ましてくれて良かった。このまま、一生目覚めないんじゃないかと…」

「…あぁ」

俺も、そのつもりだったんだがな。