神に選ばれなかった者達 後編

もし黒衣人間達が、私達と同じ言葉を喋るのなら。

響也くんのその台詞で、私が手術室の中に隠れていることに気づいただろう。

でも黒衣人間達は、響也くんが何を言ったのか分からなかったらしい。

私達が黒衣人間の話す言葉を理解出来ないように、黒衣人間の方も私達の言葉が分からないらしい。

きっと響也くんは、そのことを早々に察していたのだろう。

だから今際の際に、私に「出てくるな」と言ったのだ。

…何でそんなことが言えるの?

ねぇ。何でそんなことが言えるのよ?

助けて、って言えば良いじゃない。

そう言えたはずじゃない。何でこんな時まで…自分のことより、私のことを気遣えるの?

そしてそのまま、響也くんは「手術」されてしまった。

きっと酷く痛かったはずだ。辛かったはずだ。

血がいっぱい出ていた。肉を切り裂く音がした。

まるで命のない実験動物みたいに、響也くんの身体がめちゃくちゃにされていた…。

…その時、私が何をしていたかって?

…いつも通りだ。

私はいつも通り、何もしなかった。

ただ震えて、怯えながら、簡易クローゼットの中に隠れていた。

もし響也くんに「助けてくれ」と言われても、私は一歩も動けなかったに違いない。

一生懸命、自分に言い訳をしていた。

響也くんが戦っても無理だったのに、私が戦えるはずがない。

下手に出ていって二人共死んでしまったら、意味がない。

響也くんが「出てくるな」って言ったから。だから私はここに隠れているべき。

大丈夫、一度死んだってまた生き返るから。

生き返って、また響也くんが私のもとに戻ってきてくれる…。

…でも、そうはならなかった。

響也くんはそれ以降、私のもとに戻ってきてはくれなかった。

「死に戻り」はした。確かに。

でも、それは手術台の上で、の話だ。

響也くんは手術台の上で死んで、手術台の上で生き返って、また手術台の上で死んで、生き返って…を、繰り返していた。

どうしてそうなったのかは分からない。

分からないけど、一つ確かなことがある。

私が彼を助けなかったばかりに、彼は永遠の死の苦しみを味わい続けることになったのだ。

…私の、せいで。