神に選ばれなかった者達 後編

…さて、改めて。

李優が、皆を見渡した。

「…みらくの怪我も治ったことだし…。…響也、お前は大丈夫か?」

「俺のことは気にするな。大丈夫だ」

少々足元はふらつくが、もう自力で歩ける。

いつまでも背負われている訳にはいかないからな。

みらくと同じだ。自分の足で立たなくては。

「それじゃあ…。いそら、のぞみ。お前達に聞きたいんだが…このフロアのことを…」

「ここにバケモノ、いるの?」

出来るだけ言葉を選びながら尋ねようとする李優と、どストレートに質問する萌音。

対象的な二人だな。

「…バケモノはいる。たくさんな」

「どんなの?もう倒した?」

「そのことだけど…」

空音兄妹は、このフロアで見聞きしたものについて、時間をかけて俺達に説明してくれた。

そこで、このフロアが産婦人科の専門フロアであり。

…そしてそこで、さながら蠱毒の壺のように、子供達が恐ろしい生存競争を繰り広げていることも、二人は教えてくれた。

それは非常に生々しく、グロテスクな光景だったという。

…そうだったのか。

俺が眠っている間に…そんなことが…。

「そっか…。じゃ、萌音達が合流して良かったね」

残酷な話を聞いたというのに、萌音だけは何事もなかったように、けろっとしていた。

「そんなにいっぱい忍者の卵が居るなら、萌音達みんなで殺さなきゃ」

…忍者の卵…?

「…!殺すんですか、萌音さん…。あの子供達…」

萌音の意見を聞いた空音のぞみが、戸惑ったようにそう聞いた。

「?殺さずにどうするの?そいつらもバケモノでしょ?」

「でも…まだ、赤ちゃんなんですよ…」

「ちっちゃかろうがおっきかろうが、関係ないよ。殺さなきゃ萌音達の悪夢は終わらないんだから」

「そ…それは、そうですけど…」

…さすがに肝が据わってるな。

相手が無抵抗の赤ん坊だろうが、死にかけの老人だろうが。

それがバケモノである限り、躊躇わずに殺す。

非情なようだが、久留衣萌音がこの悪夢に順応しているのは、このドライな性格故なのだろう。

いつだってバケモノは、俺達に優しくない。

だったら、こちらも容赦や情けは捨てなければならない。

「…のぞみはやらなくて良いよ。お兄ちゃんがやるから」

「…!お兄ちゃん…」

なおも躊躇うのぞみに、兄のいそらがそう言った。

…そうだな。

「…ここで二の足を踏んでいる訳にはいかない。一階では、ふぁにが一人で戦ってるんだ。早くここを片付けて、合流してやらないと」

更に、李優がそう続けた。

「今夜はもう遅い。そろそろ夜が明けるだろう。…だから、決行は明日の夜だ」

…そういえば。

李優に言われて、俺はそのことを思い出した。