神に選ばれなかった者達 後編

「大丈夫か?二人共…立てるか?」

李優が、俺とみらくに手を差し伸べてくれた。

だが、俺はそれを断った。

「みらくを助けてやってくれ…。俺は大丈夫だ」

怪我をしてるのはみらくだけだ。

俺も血まみれではあるけれど、これはほとんど返り血だから…。

そう強がって、何とかその場に立とうとしたが。

「…くっ…」

「…!大丈夫か?」

身体から力が抜けて、思わずくらりと倒れかけたところを。

李優に支えられて、何とか転ばずに済んだ。

…足元が覚束ない。酷い貧血みたいに、頭がふらふらする。

「何なんだ、これは…。怪我はしてないはずなのに…」

「何回も死んだせいだよ。君、ずっと死にっぱなしだったんでしょ?」

李優に代わるように、萌音が自分の肩を貸して、支えてくれた。

「しばらくすれば治ると思うけど、それまではろくに戦えないよ」

「そうか…。…済まないな…」

手に力が入らず、武器である錐を握ることさえ覚束ない。

身体はほぼ無傷だと言うのに…。情けない限りだ。

…ならば、俺が取るべき選択肢は。

「…俺のことは、この場に置いていってくれ」

それが一番、正しい選択だろう。

俺が今、彼らの足を引っ張る訳にはいかない。

「えっ…?」

みらくが、途端に不安げな声を出した。

「そんなの、駄目だよ…!たった今、一緒にいるって約束してくれたじゃない」

「いや、努力をすると言っただけで、保証はできな、」

「絶対に嫌。響也くんが行かないなら、私も何処にも行かない」

…頑固。

「大丈夫だ。身体が回復したら、後から追いかけるから…」

「そんなの駄目。私も一緒に…」

「響也くんなら大丈夫だよ」

俺とみらくの応酬に、久留衣萌音が蹴りをつけた。

なんと、萌音が俺を背中に乗せて、ひょいっと背負ったのだ。

「萌音が背負ってくから。一緒に行けるよ」

「え、えぇっ…!?」

みらく、びっくり。

「も、萌音ちゃん。重くないの…!?」

「え?別に重くないけど…」

けろりとする萌音。

「むしろ、何だか軽くない?響也くん、君体重いくつ?」

…体重?

「春に測定したもので良ければ…大体56キロくらいだが」

「そっか。30キロの米袋二つ分もないんだね。やけに軽いと思った」

「そうか。力持ちなんだな」

「えへへー」

という、俺と萌音のごく普通の会話を。

みらくは、信じられないものを見るような顔で見ていた。

そして、隣で能面みたいな表情になっている李優に、こそっと尋ねた。

「…これ、本当に大丈夫なの?」

「…心配するな。萌音は怪力なんだ」

「そ、そうなんだ…」

仲間が怪力とは。非常に頼もしいことだな。