神に選ばれなかった者達 後編

まさか黒衣人間達が援軍を呼んだのか、と思ったが。

現れたのは、俺達を散々苦しめたバケモノではなかった。

「響也、みらく、無事か…!?って、えっ…!?」

息を切らして駆けつけたのは、俺達の知っている人物。

佐乱李優と、久留衣萌音の二人だった。

お互いが、お互いの姿を見て固まっていた。

「…」

「…」

「…なんか、お邪魔だったか?」

…邪魔?

「あっ、えっ、いや、ちがっ…これは、ちがっ…!」

みらく、激しく狼狽。

…何故うろたえる?

「どうしたんだ、みらく…。別に見られて困るようなことは…」

「こ、困るよっ…!君って人は、恥ずかしいって気持ちがないの…!?」

「恥ずかしい…?何が?」

「あぁ、もうっ…!これだから、天然って最強…!」 

…天然?

天然モノじゃない人間がいるのか?

「響也くん、みらくちゃん。ごめんね、イチャイチャしてるところに」

「し、してないっ!」

激しく赤面して、久留衣萌音の言葉を否定するみらく。

…イチャイチャって何だ?

「それより…どうしたんだ?二人共。何故ここにいる…?」

お前達二人は…確か、四階にいるんじゃなかったのか。

フロア間の移動は出来ないはず…。

「萌音達、エレベーターを使えるようになったから、助けに来たんだよ」

「…!使えるようになったのか?」

「うん。くノ一さんに手伝ってもらったんだ」

えへん、と胸を張る久留衣萌音。

…くノ一?

どうやらこの病院には、正体不明の女忍者が存在するらしいな。

「エレベーターが動くなら、別の…」

と、俺が言いかけたところに。

「それより、お前達…!血まみれじゃないか。大丈夫か…!?」

佐乱李優が、こちらに駆け寄ってきた。

「うん…。手榴弾、三つとも全部使ったから…」

みらくが、力なく笑いながら答えた。

三つも使ったのか。成程。

今更だが、みらくが生きていて良かった。

「マジかよ…。お前、無茶しやがって…」

「でも…響也くんを助けられたよ」

みらくにとって大切なのは、そのことのようだった。

自分が怪我をしたことよりも、ずっと誇らしいことがある。

「見てるだけじゃなくて…守られてるだけじゃなくて、私も戦ったよ。萌音ちゃん…」

「…」

「これで…少しは、認めてくれるかな…」

「…うん。頑張ったね」

萌音が、みらくの言葉にこくりと頷いた。

この二人が『処刑場』で交わしたやり取りを、俺が知るのは後のことである。