神に選ばれなかった者達 後編

なんという…なんという危険なことを…。

「お前…。こんな無茶を…」

手榴弾という武器は強力だが、その特性上、少しでも使い方を誤ればこちらにも牙を向く。

ましてや、こんな広くもない部屋で手榴弾を使えば、どうなるか…。

事実、みらくの身体のあちこちに、破片が突き刺さっていた。

…なんて馬鹿なことを。

その破片が、一つでも心臓に突き刺さっていたら。

大きな血管を傷つけていたら。

一歩間違えたら…死ぬのは、みらくの方だったのに。

「この程度、響也くんが味わった痛みに比べたら、何でもないよ…」

みらくは微笑んでいた。

身体中に破片が突き刺さって、じくじくと血が出ているのに。

みらくの中にあるのは痛みよりも、深い達成感だった。

「何があっても出てくるなって…そう言ったじゃないか…」

助けてくれたのは有り難いが。

でも…俺はみらくを傷つけたくなくて…こんな怖い思いを、痛い思いをして欲しくなくて、隠れているように言ったのに。

「…俺のことなんて…放っておけば良かったものを…」

「…だめ。そんなこと言わないで」

え?

みらくは、自分の額と俺の額を、こつんとぶつけた。

「そんなこと言わないで…。君は優しい人だよ。優しくて、強くて、勇気があって…」

「…」

「私にとって、響也くんはヒーローなんだよ。凄く大切な人なんだよ…。…だから、自分を貶めるようなことは言わないで…」

…初めて言われた。

そんなこと、初めて言われた…。

自分が誰かにとって、大切な存在になるなんて…。

「一緒に戦おう。今度は私も、逃げずに頑張るから…。君が私を守ってくれた分だけ、私も君を守るから…」

「…みらく…」

「…お願い。私を一人にしないで」

…そうか。

不思議なものだな。

現実では、誰も俺のことなんて必要としていないのに…。

まさか、夢の中で必要とされるとは…。

…誰かにとって大切な存在になるというのは、こんなにも心地良いものなんだな。

それがよく分かった。

ならば…その期待には、応えなければならないな。

誰に強制されたことじゃなく、自分自身の意志で。

「…分かった」

俺は、みらくにそう答えた。

「…一人にしない。…ように、努力する」

「…君って人は、そこは『絶対に一人にはさせないよ』ってかっこつけるところじゃないの?」

え?

「だって、保証は出来ないだろう。常に一緒にいられるとは限らない。自分に出来ないことは安易に約束すべきでは、」

「あー、うん。分かった分かった…。…そういえば、君はそういう人だったな…」

「…」

俺は何かディスられているのだろうか。

思ったことを言っただけなのだが。

「…でも、安心した。響也くんはやっぱり、響也くんだね」

「…それは褒めてるのか?それとも貶してるのか?」

「褒めてるんだよ…」

…そうか。それは良かった。

「あのね、響也くん。私、今日ね、現実で君に…」

と、みらくが言いかけたその時。

手術室の扉が、勢いよく開けられた。