神に選ばれなかった者達 後編

ーーーーーー…深く、暗く、苦しい闇の中に。

突然、一筋の光が差し込んだ。








「…響也くん」

「…」

「響也くん…響也くん、起きて…」

か細い、震える、小さな声で。

誰かが、自分を呼んでいた。

…起きたくない。

邪魔しないで欲しい。このまま、一生眠っていたい。

辛い現実も…辛い過去も、辛い夢の中も、目を背けていたい…。

悪いことだろうか。そんな風に考えるのは。

俺は今まで、ずっと頑張ってきた。

休むことも、後ろを振り返ることもなく、認められる為に努力してきた。

だけど、その努力は結局報われなかった。

もう疲れてしまった。

これまでずっと頑張ってきたんだから、もう休んでも良いじゃないか。

立ち上がることも立ち向かうことも放棄して、蹲り続けても良いじゃないか…。

そう思うのは、間違いなんだろうか。

俺が目を覚ますことなんて、誰も望んでいない。

実の親でさえ、俺のことを捨てたのに。

他の誰が、俺が目覚めることを望むだろう。

誰も困らない。俺がいなくなっても、悲しむ人なんていない。

例え一時的に心配していたとしても、しばらくすれば興味を失うだろう。

俺は誰にも必要とされていない。無価値な人間なのだから…。

きっと、すぐに諦めるだろう。

…しかし。

「響也くん…。響也くん、お願い。起きて…」

その声は、なかなか諦めてくれなかった。

それどころか、俺が起きるまで絶対に呼び続けるのを諦めないとばかりに。

何度も、何度も呼び続けた。

…どうしてなんだ?

俺が起きなくても、誰も困らないだろう…。

俺なんて必要ないはず。俺である必要はないはずなのに。

どうしてそんなにも…悲しそうな、泣きそうな声で俺を呼ぶんだ?

「起きて…響也くん。お願い…響也くん…」

やめてくれ。

俺は目を覚ましたくない。もう立ち向かいたくない。もう苦しみたくない…。



…その時だった。

「…お前は無価値な存在などではない」

「…え?」

俺の目の前にいたのは、背の高い、翼の生えた青年だった。