神に選ばれなかった者達 後編

響也くんは目を覚まさなかった。

私の声が届いているのか、いないのか…多分届いていないだろうけど。

でも、今は届かなくても良い。

私が響也くんを助けるから。その時に、本人に伝えれば良い。

私は響也くんの手を離し、立ち上がった。

さぁ、もう大丈夫。

「…会わせてくれてありがとう」

私は、響也くんの弟くんに言った。

「もう大丈夫」

「え、えぇと…。あの…」

弟くんは、戸惑い気味の表情を見せ。

それから、こう聞いてきた。

「あなたはもしかして…響也兄ちゃんの、ガールフレンド…か何か?」

「…まさか」

そんな風には思われてないよ。…私はきっと。

「大事な友達だよ」

友達とさえ、響也くんが思っててくれるかは分からないけど。

だけど…私はそう思ってる。

大事な友達だって。かけがえのない存在だって。

「友達…ですか。あの…響也兄ちゃんが何でこうなったのは…あなたは知ってるんですか?」

「…」

知っている。

だけど、夢の中での出来事を、弟くんに説明する訳にはいかなかった。

多分、響也くんも自分の弟に、夢の中のことを話してはいないだろうから。

それに…話しても、そんな荒唐無稽な話を信じてもらえるとは思えなかった。

「…ごめんね」

私は、弟くんに謝った。

「でも、もうすぐ…きっともうすぐ、目を覚ますから。信じて待っててあげて」

目覚めさせてみせる。

私が、きっと。

…響也くん。









…君のこと、今度は私が助けるから。