神に選ばれなかった者達 後編

私は以前、響也くんが私に話してくれたことを思い出した。

夢の中で私の命を救ってくれた、屋上に捨てられていた机と椅子。

響也くんの机と椅子。

あれ、クラスメイトに捨てられたんだって言ってたよね。

それじゃ…この人達が…。

「あいつの顔見ずに済んで、せいせいしたわ」

「ほんと。あんな陰キャには、不登校がお似合いだって」

「あはは。ウケる〜」

…。

…何がそんなに面白いの。

私の…命を救ってくれた人なのに。

だけど、これは私が自分の学校でしていることと同じだった。

私も同じことをしている。何の罪もないクラスメイトに。

自分がいじめられたくないばかりに、他人をいじめて、犠牲にしている。

夢の中でも現実でも、私は他人を犠牲にして自分だけ助かろうとしている。

私は醜い。

目の前にいるこの人達と同じ、最低の人間。最低の、最低の…人間のクズ。

踏みにじられる痛みは、誰よりもよく知っているはずなのに…。

…響也くん。

私、君と同じになるよ。

傷つけられる痛みを知っていながら、傷ついている人を見て見ぬ振りするよりも。

傷つけられるその痛みを共に耐え、共に涙を流せる人に。

一人じゃ耐えられない痛みと苦しみを、一緒に分け合おう。

…本当の強さって、きっとそういうことだよね?

…だから。

「…やめて」

「は?」

私は小さな、でも確かにそう言った。

「響也くんを悪く言わないで…」

あなた達に…私みたいな人間に、彼を悪く言う資格なんてないよ。

「響也くんは、私を助けてくれた…」

一度だけじゃない。

最初に会った時からずっと、私を守ってくれた。

今もずっと。

こんなどうしようもない私を、一生懸命、宝物みたいに守って…。

そんな彼の高潔さを、誰一人汚すことなんて出来ない。

「優しくて、強くて、勇気のある人なんだ…。だから、悪く言わないで…!」

「…」

私の必死の剣幕に、響也君のクラスメイト達は怯んだようだった。

「な、何マジになってんの…?あんた、あいつの何なのよ?」

…何だろうね。 

私ごときがこんなことを言うのは、おこがましいかもしれないけど…。

「私は…私にとって、響也くんは命の恩人…」

そして。

「私の…大切な、友達よ…」

…響也くんが、私のことをどう思っていようと。