神に選ばれなかった者達 後編

響也くんは、本当に不思議な人だった。

同い年に、こんな男の子は一人もいなかった。

高校生なら普通、当たり前に知ってることを全然知らなかったり。

かと言って知識がない訳ではなく、私の持ってる手榴弾の知識を、誰よりもよく知っていた。

それでいて、コスメグッズのことを知らない…のは、まぁ男の子だから、百歩譲って仕方ないとして。

yourtubeを全然見ないとか、有名なアーティストである『frontier』を知らないとか。

…この間なんて、明るい話をしてって言ったら、星の話をし始めるしね。

なんかズレてるんだよなぁって。

だから…正直に、本当に正直に言うと。

私は最初、響也くんのことを心の中で馬鹿にしていた。

皆が当たり前に知っていることを何も知らない、無知で鈍臭い、退屈な人。

そう思っていた。

響也くんは…私が、学校で馬鹿にしているクラスメイトと、よく似ていた。

だから…心の隅っこで、響也くんを馬鹿にしていたのだ。

助けてくれたのに軽蔑するなんて、我ながら酷いと思うけど。

でも最初の頃は、響也くんがどんな人か分かっていなかった。

一緒に過ごすうちに、段々分かってきたのだ。

確かに彼は、「普通の」男子高校生とは違うかもしれない。

でも、それは決して馬鹿にされるものでも、軽蔑されるものでもなかった。

鈍臭いどころか、意外に行動力が結構あって。

屋上から救助袋を使って滑り降りたり、自ら病院内の偵察を買って出たり…。

知識も行動力もあるのに、それなのに卑屈なところもあって。

「自分は無価値な人間だ」って、当たり前のように真顔でそう言う…。

…何であんなこと言うんだろ。

…でも、不思議とそんなところも、嫌だとは思わなかった。

彼は自分に素直なのだ。良くも悪くも。

そして同じくらい、他人に対しても素直なのだ。

そのせいで顰蹙を買うこともあるだろうけど、だからといって、他人に好かれる為に自分を偽ることはしない。

自分は自分。そんな自分を受け入れられない人がいるなら、それは仕方ない。

そんな風に割り切っているようだった。

…羨ましい。

そして、眩しい。

響也くんは私にとって、絶対に手が届かない星のような…眩しい存在だった。

彼に比べて、私は酷く矮小だった。

響也くんの前では、私はただの卑怯者以外の何者でもなかった。

…そう、私は汚い。

響也くんは、あんな良い人なのに。

本当は自分だって怖いはずなのに、死にたくないはずなのに、私のことを守る為に努力する、って言ってくれた。

いつだって、怯えて動けない私を守ってくれた。

自分を無価値だと卑下するのに、私を価値のある人間だと言って…。それで、私を守る為に…。

…私を守る為に、彼は死んでくれたのだ。

そんな彼を、どうして軽蔑することが出来るだろう。

軽蔑されるべきは、他でもないこの私だ。