神に選ばれなかった者達 後編

価値がないなら、いっそ自殺でもすれば良いものを。

そんな度胸はなかったし、それに俺には分かっていた。

自分が死んだとしても、母はほんの少しも、俺を捨てたことを後悔したりしないだろう。

俺が自殺したと聞いても、興味なさそうに「そう」と言うだけだろう。

俺は母のことを、誰よりよく分かっている。

何の意味のない死に、何の意味があるのだろう。

結局、俺は今日に至るまで自殺することはなく。

叔母の家に預けられ、母にしてみれば三流の高校に通いながら。

おまけに生贄に選ばれて、毎晩のように殺されながら生きている…。

…でも、それで良い。

死ぬのは痛いし、苦しい。

だけどそれ以上に俺は、こんな自分に満足していた。

だって、俺が犠牲になることで、みらくを守っている。

誰かを守ることが出来るなら、自分の死に意味があるのなら、死ぬことなんて怖くない。

痛いけど、でも怖くはなかった。

俺は、みらくの為にみらくを守っていたんじゃない。

みらくを守ることで、自分に価値が生まれたような気がしているだけだ。

だから、みらくを守ることは俺の自分勝手な自己満足でしかない。

それに…運命に自分で抵抗出来ない、というのは、案外悪いことではない。

だって、頑張る必要はないだろう?

どうしようも出来ないんだから。自分でどうにも出来ないことなんだから、頑張って抵抗する必要はない。

何も考えずに、黙って死の苦しみに向き合っていれば良い。

自分で考える必要がないというのは、案外良いことだ。

さすがの俺も、もう疲れてしまった。

正直、もう何もしたくない。

このまま、一生死に続けても構わない。

どうせ俺は無価値な人間なのだから。

…誰一人、現実で俺が目覚めることなんて望んでいないのだから。

このまま目を閉じて、二度と目覚めたくない…。





…そう、思っていたのに。