その後、母は解答用紙を俺に見せながら、間違えた箇所を一問一問確認させた。
で、「これはどうして間違えたの?」とか。
「何故こんなところで間違えたの?」と、一問ずつチクチク言われた。
何故間違えたのかと聞かれても…。間違えたものは間違えたんだから、どうしようもないだろう。
でも、そう言われると何だか、自分がとんでもなく無能なような気がして。
酷く萎縮してしまいながら、それでも一問ずつ解き直した。
もし解き直しても正解しなかったから、「二度も同じミスをする無能」として、今度こそ捨てられてしまうかもしれない。
その恐怖のあまり、俺は死物狂いで問題を解いた。
解き直せと言われるということは、解き直しで正解すれば見逃してもらえるかもしれないということだ。
幸い、解き直すと全問正解することが出来た。
こういうことが、我が家にとっては日常茶飯事だった。
今回はもう許されないかもしれない。もう見捨てられるかもしれない…。
そう思っては怯え、震え、恐怖したものだ。
…こんな親のもとで暮らすくらいなら、いっそ見捨てられた方がマシなのでは?
普通の人だったら、きっとそう思うだろう。
でも、俺はそう思わなかった。
今思えばおかしなことだが、俺は何としても、どんなに辛い思いをしても、この家にしがみついていたかった。
…何故、こんなにも執着するのか?
…さっきも言っただろう?
俺は、そんな母のことが好きだったからだ。
どんなにめちゃくちゃな教育でも、俺は母のことが好きだった。母のもとで育てられたいと思っていた。
もっと正確に言うと…母の期待通り、母の望む「萩原響也」になりたかったのだ。
あの厳しい母に育てられて、いつか母の望む通りの大人になって。
そして、母に言ってもらいたかった。
「あなたは私の期待通りの人間になった」と。
母の完璧な教育が完成して、母の望む大人になって…。
その時初めて、俺は母に認められ。
…そして、自分自身で、自分のことを認められるようになる。
自分は無能ではない。価値のある存在。
母の完璧な遺伝子を受け継いだ、完璧な人間になることで、そのことを証明したかった。
証明出来なければ、俺がこの世に生まれてきた意味がない。
自分の存在理由、存在価値を証明する為に、俺は何としても、母に認められなければならなかった。
そして俺自身も、母のようになりたかった。
母は俺にとって創造主であり、仕えるべき君主であり。
俺の、憧れの人でもあった。
母は他人に厳しい人だが、でも自分にも厳しかった。
身だしなみにも気を遣って、あんなに仕事が忙しかったのに、外に出る時は化粧を欠かさなかった。
髪も美しく整えて、爪まで綺麗に磨いていた。
着る服も、いつも完璧にアイロンを掛けた、きちんと整った服だけを着ていた。
身だしなみにとても気を遣っていたこともあって、母は年齢よりもずっと若く見えた。
俺と姉弟だと言っても通じるくらい、若々しくて綺麗な人だった。
定期的にスポーツクラブに通ってたこともあって、スタイルも良く、身体は引き締まっていた。
大学教授じゃなくて、モデルの仕事も引き受けられそうな容姿をしていた。
そんな母を見る度に、誇らしく思ったものだ。
学校の参観日で、他の生徒の母親を見る機会があったが。
他のどの生徒の母親よりも、自分の母が一番綺麗だと思った。
スタイルの良い、美しい姿。そして、決して他人には媚びない堂々とした態度…。
…って、こんなことを言うと、マザコンだと思われそうだな。
で、「これはどうして間違えたの?」とか。
「何故こんなところで間違えたの?」と、一問ずつチクチク言われた。
何故間違えたのかと聞かれても…。間違えたものは間違えたんだから、どうしようもないだろう。
でも、そう言われると何だか、自分がとんでもなく無能なような気がして。
酷く萎縮してしまいながら、それでも一問ずつ解き直した。
もし解き直しても正解しなかったから、「二度も同じミスをする無能」として、今度こそ捨てられてしまうかもしれない。
その恐怖のあまり、俺は死物狂いで問題を解いた。
解き直せと言われるということは、解き直しで正解すれば見逃してもらえるかもしれないということだ。
幸い、解き直すと全問正解することが出来た。
こういうことが、我が家にとっては日常茶飯事だった。
今回はもう許されないかもしれない。もう見捨てられるかもしれない…。
そう思っては怯え、震え、恐怖したものだ。
…こんな親のもとで暮らすくらいなら、いっそ見捨てられた方がマシなのでは?
普通の人だったら、きっとそう思うだろう。
でも、俺はそう思わなかった。
今思えばおかしなことだが、俺は何としても、どんなに辛い思いをしても、この家にしがみついていたかった。
…何故、こんなにも執着するのか?
…さっきも言っただろう?
俺は、そんな母のことが好きだったからだ。
どんなにめちゃくちゃな教育でも、俺は母のことが好きだった。母のもとで育てられたいと思っていた。
もっと正確に言うと…母の期待通り、母の望む「萩原響也」になりたかったのだ。
あの厳しい母に育てられて、いつか母の望む通りの大人になって。
そして、母に言ってもらいたかった。
「あなたは私の期待通りの人間になった」と。
母の完璧な教育が完成して、母の望む大人になって…。
その時初めて、俺は母に認められ。
…そして、自分自身で、自分のことを認められるようになる。
自分は無能ではない。価値のある存在。
母の完璧な遺伝子を受け継いだ、完璧な人間になることで、そのことを証明したかった。
証明出来なければ、俺がこの世に生まれてきた意味がない。
自分の存在理由、存在価値を証明する為に、俺は何としても、母に認められなければならなかった。
そして俺自身も、母のようになりたかった。
母は俺にとって創造主であり、仕えるべき君主であり。
俺の、憧れの人でもあった。
母は他人に厳しい人だが、でも自分にも厳しかった。
身だしなみにも気を遣って、あんなに仕事が忙しかったのに、外に出る時は化粧を欠かさなかった。
髪も美しく整えて、爪まで綺麗に磨いていた。
着る服も、いつも完璧にアイロンを掛けた、きちんと整った服だけを着ていた。
身だしなみにとても気を遣っていたこともあって、母は年齢よりもずっと若く見えた。
俺と姉弟だと言っても通じるくらい、若々しくて綺麗な人だった。
定期的にスポーツクラブに通ってたこともあって、スタイルも良く、身体は引き締まっていた。
大学教授じゃなくて、モデルの仕事も引き受けられそうな容姿をしていた。
そんな母を見る度に、誇らしく思ったものだ。
学校の参観日で、他の生徒の母親を見る機会があったが。
他のどの生徒の母親よりも、自分の母が一番綺麗だと思った。
スタイルの良い、美しい姿。そして、決して他人には媚びない堂々とした態度…。
…って、こんなことを言うと、マザコンだと思われそうだな。


