神に選ばれなかった者達 後編

その日の夜。

俺達が送り込まれた夢の世界は、例の病院ではなかった。

…どうやら。

昨日までの攻防は、無事に終わったようだな。

「…」

俺は、無言で周囲の様子を見渡した。

周囲は薄暗く、そして壁に無数の…。

…絵画、が飾られていた。

…ふむ。絵画が飾られている場所…。

恐らく、十中八九、美術館だろうな。

…美術館なんて、一体いつぶりだろうか。

学校、病院と来て…次は美術館か。

もしかして、次は映画館か何かか?

…それにしても。

周囲に飾られている絵画には、全く見覚えはなかった。

俺は美術の分野には疎いから、全てを把握出来る訳じゃないが。

一般常識の範囲内として、世界的に有名な画家の代表作品くらいは、大体把握している。

しかし、それらの見知った絵画は、この中には一枚もなかった。

むしろ…初めて見る絵のタッチだ。

例えば、今俺の前にある大きな絵画。

これはかなり大きい。額縁の高さは、俺の背丈を軽く越えている。

これほど大きな絵画は珍しい気がするな。

世界的に有名な絵画って、よく美術の教科書に載っているが。

あれって、写真で見るとそこそこ大きいように見えるが、実際の現物は結構小さい。

…というケースは、結構あるんだよな。

あれ?実物はこんなモノなのか?と思うこともしばしば。

だが、今俺の目の前にある絵は大きい。

そして、何を伝えたいのか分からない。

この大きさカンバスいっぱいに、黒い絵の具で塗り潰されている。

それだけだ。この絵は。

ただ、額縁いっぱいに黒い絵の具をぶち撒けただけ。

…これも芸術なんだろうか?

俺には、ただカンバスと絵の具の無駄遣いをしているようにしか見えない。

世界的に有名な某女性の名画は、見る角度によって表情が変わるらしい。

もしかしてこの絵画も、見る角度によって見え方が変わるのだろうか。

そう思って、右、左、真正面、など角度を変えて眺めてみたが。

…やっぱり分からない。

俺の貧弱な審美眼では、この絵の良さが理解出来ないようだ。

多分これは、抽象画なんだろう。

素人が見ても意味不明で、「これなら自分でも描けるじゃん」と思ってしまうが。

絵心のある人が見ると、「これは素晴らしい絵画だ…!」と絶賛する、みたいなアレ。

…一体作者は誰なんだろう?

是非とも、この絵の見方を教えてもらいたいものだな。

…と、思っていると。

「ひゃうぅっ!?」

「ん?」

声がして振り向くと、手榴弾を片手に持ったみらくの姿があった。