神に選ばれなかった者達 後編

「このことを確かめたかったんだ、俺は…。昨夜のはともかく、『あの時』のバケモノのことは、俺と萌音しか知らないから…」

あの時はまだ、萌音と李優以外、いなかったもんね。生贄。

だから響也君やふぁに君達にとっては、昨日のが初見だ。

でも、萌音と李優は知っている。

「夢の中の世界のこと、俺達は未だに…全然知らないけど…でも、あの世界は確かに繋がってる」

「うん」

「この情報は大きいと思わないか?もっと詳しく調べたら、俺達を苛んでる毎晩の悪夢の原因が分かるかもしれな、」

「うーん。別に分かんなくて良いんじゃないかな」

「…は?」

わー。今の李優の顔。

鳩が豆鉄砲、の顔だ。

「…ごめんな、ちょっと聞き違いかもしれない…。…何だって?」

「別に分かんなくて良いんじゃないかな。原因なんて」

「…何でだよ?」

何で…って言われても…。

萌音はそう思ってるから。

この世に生まれた時から、不思議な世界の夢を見るのは萌音にとって、当たり前のことだったから。

今更その原因なんて、どうだって良いよ。

「原因なんて何でも良い。萌音がやるべきことは一つだもん」

「え…」

「目の前にバケモノが出てきたら殺す。それだけだよ」

李優含め、他の生贄の皆がどう思ってるのか分からない。

だけど、萌音はそう思ってる。

難しいことなんて考えない。どうだって良い。

萌音は倒すべき敵を倒す。殺すべき敵を殺す。

萌音がするのはそれだけだ。

「…気持ちが分からない訳じゃないが、でも、誰もがお前みたいに、割り切って考えはいないからな」

「そうなの?」

「そりゃそうだろ…。誰だって、痛い思いはしたくないだろ?」

痛い思いはしたくないよ?萌音だって。

相手が痛いのは良いけど、萌音が痛いのは嫌。

「李優は、もう悪夢を見たくないの?」

「えっ?…それは…まぁ…」

そうなんだ。

…ちょっとヘコんだかな。

「俺は別に傷ついても良い…。でも、夢の中でお前や…他の仲間達が傷つくのは、俺だって…」

「…萌音ね、お友達が出来たよ」

「…はい?」

そうだよね。誰だって、痛いのは嫌だよね。

痛いの嫌だし、折角夢を見るならバケモノの夢じゃなくて、もっと良い夢が見たいよ。

萌音だってそう思う。

出来れば…たまには…るんるんと虹の橋を渡って、雲の上をぴょんぴょんして、ちょうちょと一緒に空を飛ぶ夢を見たい。

楽しそうだと思わない?

そういう悪夢を所望する。

…って、それは悪夢ではないよね。楽しい夢だ。

萌音にとっては、文字通り夢のまた夢。

…だけど、そこに李優がいないなら。

どんなに楽しい夢でも。虹の橋を渡っても。

夢の中で、萌音の隣に李優がいないんだったら。

その夢は、決して楽しい夢なんかじゃない。

むしろ、李優がいなかったら、それは悪夢だ。