神に選ばれなかった者達 後編

萌音の父親は疲れていたのだろう。

妻と長女の板挟みになって、しんどかったのだろう。

父親にしか分からない苦労も、辛さも、たくさんあったのだろう。

それは分かる。

だけど、萌音にはもう、父親しか味方がいないのだ。

だから父親に少しでも突き放されるような言葉を言われたら、萌音は完全に孤立してしまう。

あぁ、私のせいなんだ、と萌音は思った。

やっぱりお父さんも、そう思ってたんだ。

私に味方してくれてるけど、本当は、心の中で。

私のことを疎ましく思ってたんだ。私がもっと、母の望むように振る舞ってくれたら、って。

お父さんも、私に失望していたんだ…。

これまで信じていたもの、頼ってきたものが。

がらがらと、音を立てて崩れ落ちていった。

夢の中でさえ、感じたことのない感情。

それは、萌音が人生で初めて体験した、本物の絶望だった。




…この日を境に、萌音は以前の萌音じゃなくなったのだと思う。