神に選ばれなかった者達 後編

このままでは、いつ生活が破綻してもおかしくなかった。

日を追うごとに、萌音は真理亜のことを、そして母親のことを避けようとした。

しかし萌音母は、そんな萌音の態度が許せなかった。

自分はこんなに頑張って子育てをしているのに、何が気に入らないの…。

そんな思いだったんだろう。実際、萌音にそんな言葉を何度かぶつけていた。

そりゃ確かに、あんたは良い母親だ。

子育ても頑張ってる。母親の鑑だよ。

…真理亜にとってはな。

だけど萌音にとっては、あんたはただ育児放棄しているに過ぎない。

父親が何度取りなそうとしても、駄目だった。

萌音はすっかり、母から愛情を得ることを諦めてしまっていたから。

歩み寄りなんて出来なかったし、真理亜のお世話要員にされるのは御免だった。

親子の間に、深刻な不和が広がりつつあった。

思えば、あの頃既に、限界が見え始めていた。

そしてある日、親子関係が崩れる決定的な出来事が起きた。

萌音母が目を離した隙に、真理亜が云えから脱走したのである。

これは一大事。

真理亜には多動の傾向があって、危険意識というものが非常に低い。

これが障害の特徴の一つなのである。

その為、いつもは玄関には必ず鍵をかけているのだが。

運の悪いことに、この日、近所の人に回覧板を届けに来てもらった時に。

萌音母は、うっかり玄関の鍵を締め忘れてしまった。

些細だけれど、とんでもないミスだった。

その時萌音と真理亜は、一緒にリビングにいたのだけれど。

真理亜はお気に入りのアニメビデオに夢中で、萌音は全く興味がなく、ソファに座ったままうたた寝をしていた。

その頃萌音母は、別室で、溜まっていた洗濯物をまとめて洗濯している最中だった。

いつの間にかビデオが終わって、暇を持て余した真理亜が。

室内をしばらくうろちょろして、そしてついには、玄関から出ていってしまったことに、誰も気が付かなかった。

気がつくと、真理亜の姿はなく。

玄関のドアが、無防備に開けっ放しになっていた。

それを見た萌音母は、急いでリビングに駆け込んできて。

そして、うとうとしていた萌音の肩をがっちりと掴んだ。

「あの子は何処に行ったの!?」

「…?」

突然、寝起きに母親に怒鳴られて。

萌音は、びっくりして目を覚ました。

夢うつつだった萌音は、寝起きに般若のような顔をした母親と対面した。

「あの子は何処?何処に行ったの!?」

萌音母、半狂乱。

「え…。あ、あの子って…?」

「とぼけないで!真理亜のことよ!」

とぼけてるつもりはなかった萌音、困り顔。

「あの子は何処なの!?」

「…?」

萌音は、きょろきょろと部屋の中を見渡した。

先程までテレビを観ていたはずの妹は、いつの間にかリビングから消えていた。

「…さぁ…?」

何処に行ったのかなんて、萌音が知っているはずがない。

すると、萌音母は血相を変え、鬼のような形相で。

思いっきり、萌音の頬を引っぱたいたのである。