神に選ばれなかった者達 後編

俺は母が望むように、エリート幼稚園を卒園し。

その後は、名門の私立小学校に入学した。

この学校を受験することを決めたのも、当然母だった。

俺の意見なんて、生まれてこの方一度も聞いてもらった試しがない。

通う学校も、使う鉛筆も消しゴムも、どんな本を読み、どんな勉強を何時間するのかも。

今日どんなものを食べるかということさえ、全て母が決めた通りにした。

母が「しなさい」と言ったことをした。母が指示しなかったことはしなかった。

自分から母に話しかけることは、ほとんどなかった。

他愛のない雑談なんて、した覚えがない。

用がある時は、母の方から話しかけてくる。
 
その時も非常に簡潔で、親子とは思えないほど素っ気ないものだった。

母は余計なことは何一つ言わなかった。いつだって、必要なことを必要なだけ喋った。

余計なことを喋るなんて、酸素の無駄だと言わんばかり。

従って、俺は無口な子供に育った。

誰に何を言われても、動じない子供になった。

母の望む通りに。

母は、俺を自分と同じように育てようとしていた。

自分と全く同じ考えを持ち、自分と同じように優秀な、自分の分身として育てたかったのだ。

生まれてからたった数年で、俺は母の望む通りのロボット…。

もとい、人形のように育てられた。

友達なんて一人もいなかった。友達を作ることは、母が許さなかった。

例え優秀な小学校の生徒と言えど、母にとって他人は敵だった。

母曰く、友達というのは親切なフリをして近寄り、自分を堕落させる大きな誘惑だった。

自分と相容れない考えを持つ友達と付き合わせたら、どんな考えを吹き込まれるか分からない。

俺は、順調に母の望む通りの人形に育っていたから。

母にしてみれば、何処ぞの得体の知れない他人に口を挟まれて、俺に変な考えを吹き込まれたくなかったのだ。

だから、母は俺がクラスメイトと仲良くすることを嫌った。

クラスメイトは倒すべきライバルであり、敵であり、決して心を許してはならないのだと教えた。

いつも通り、俺は母の言うことを信じた。

母の言うことはいつだって正しく、絶対的なのだから。

母が望むように、俺はクラスメイトのことを敵だと認識した。決して心を許したりはしなかった。

彼らはいつだって、俺を堕落させる為に、俺の足を引っ張ろうと企んでいるのだと、そう思い込んだ。

だから、俺はクラスメイトと遊ばなかった。

クラスメイトとお喋りをすることも、何なら挨拶さえまともに返さなかった。

そして、勝手にクラスメイトを敵視していた。

随分と、嫌な奴だった。

クラスメイトにしてみれば、俺は失礼な奴以外の何物でもなかった。

何もしてないのに何で俺に嫌われてるのか、分からなかっただろうな。

今思えば、申し訳ないことをした。

クラスメイトは何も悪くないのにな。

何の謂われもなく嫌われて、気分が悪かったに違いない。

だけど、俺も…息が詰まるようで、辛かった。

いくらクラスメイトと関わらないようにしても、毎日机を並べて生活していたら、全く関わらない訳にはいかない。

うっかりクラスメイトと関わって、母に睨まれるようなことがあってはならないと、俺は必死だった。