神に選ばれなかった者達 後編

萌音の両親、特に母親は、次女の真理亜の為に何でもしてあげようと誓った。

その為に、どんなに遠くでも、良い先生がいると聞けば真理亜を連れて行った。

そこで真理亜を診てもらって、真理亜に必要な療育についてアドバイスをもらい。

地域の「障害児を持つ親の会」みたいな支援団体に所属し、そこでの活動に心血を注いだ。

とにかく真理亜の為に、真理亜の将来の為に、支援してくれる横の繋がりを、少しでも広げたかったのだ。

引き続き、障害児教育の講演会やセミナーにも積極的に参加した。

真理亜が将来通うことになるであろう、地域の特別支援学校に関する情報もたくさん集めた。

どの学校には専門の先生がいて、どの学校の評判はどんな感じで、どういう支援をしてきて、通学手段は…みたいな情報を。

まだ気が早過ぎるだろ、とは思うが。

障害児を持つ親の会で、先輩ママから「積極的に自分で情報を集めて、常に先手を取るくらいのつもりでなきゃ、後で後悔する」と言われたことから。

他人からの情報提供を待つのではなく、自分から積極的に情報を集めることに徹したのだ。

その心掛けは、立派なものだと思う。

こんな親に育ててもらって、真理亜はとても幸運だったと思う。

しかし萌音母は、妹の為に労力を費やすばかりで。

姉である萌音のことは、段々放ったらかしになっていった。

萌音は僅か三、四歳の頃から、当たり前のように一人で留守番するようになった。

萌音母は妹の真理亜を、何処にでも連れていった。

病院でも、セミナーでも、あらゆる場所に。

その間萌音は、ひたすら留守番だった。

萌音母は、家にいる時でも、決して真理亜から目を離さなかった。

しかし、萌音のことは平気で、何時間でも家の中に置き去りにした。

「萌音は健常児なんだから大丈夫」というのが、萌音母の言い分だった。

実際萌音は、一人で大人しく留守番していた。

何もしなかった。大人達が家に帰ってくるまで、ひたすら家の中で体育座りをして。

誰かが帰ってくるのを、じっと待っていた。

そうするしかなかった。

なまじ、萌音が大人しく、手のかからない子だったことが災いした。

何時間家に置き去りにしても、萌音が大人しく待っているものだから。

余計、「萌音は一人でも大丈夫」と勘違いして、萌音母は萌音を置き去りにした。

そうして段々と、負の連鎖から抜け出せなくなっていった。