神に選ばれなかった者達 後編

断っておくが、萌音の妹の真理亜には、何の罪もない。

この件で、誰かが悪いということはないのだろう。

皆必死だった。皆…それぞれの心の飢えを満たす為に必死だった。

それが決定的にすれ違い、上手く噛み合わなかった。

それだけの話なのだ。





…さて、話を戻そう。

二人目の子を身ごもった時、萌音の母親は、例のヤブ医者ではなく。

別の産婦人科に通うことにした。

まぁ、それが賢明だな。

そこで検査してもらったところ、二人目も女の子であると判明した。

今度こそは男の子…と、心の隅っこで願っていたに違いないが。

それでも、先程も言った通り。

萌音の両親は、「出来れば男の子」と望んでいただけで。

女の子なら、女の子でも良い。

むしろ、萌音が非常に育てやすい赤ん坊だったことから。

やっぱり、女の子の方が育てやすくて、しかも可愛いから。

姉妹でも良いかもしれない、なんて考えていた。

良くも悪くも、二人目の子であるということで肩の力が抜けてたんだろうな。

今度こそは準備万端に、と、女の子用のベビー用品を用意し、そして女の子の名前を、両親で考えることにした。

その時のことを、萌音は、相変わらず覚えている。

「あのね、萌音ちゃん。聞いて」

産婦人科の定期検診から帰ってきた萌音の母は、嬉しそうに萌音に話しかけてきた。

一人で遊んでいた萌音は、その手を止めた。

「お腹の子、女の子なんだって。萌音ちゃんの妹よ。嬉しいでしょ?」

うっきうきの笑顔で、萌音母は萌音にそう告げた。

その瞬間、萌音の心に疑念が渦巻いた。

「萌音ちゃんには妹が出来るの。楽しみね。いっぱい可愛がってあげてね」

と、萌音母は萌音の頭をよしよし、と撫でた。

それは違うだろ、と俺は思うけどな。

子供を可愛がるのは親の役目で、姉の役目じゃないだろ、と。

それは俺に兄弟がいないから、そう思うんだろうか。

空音兄妹を見てみろ。

親より誰よりも、いそらは妹であるのぞみのことを溺愛してるぞ。

まぁ空音兄妹ほどじゃなくても、姉として、萌音には妹を可愛がって欲しかったんだろう。

仲良しの姉妹…っていうのを、期待してたんだろうな。

…しかし、萌音は妹が生まれることを、手離しでは喜べなかった。

記憶のせいだ。

萌音を戒める、生まれた時の記憶。

萌音は、妹が生まれると言って喜んでいる母親を見て、もやもやとした気持ちを抱いた。

「どうして?」と。

「私が女の子だって知った時は、あんなに拒絶してたのに」と。

「どうして、妹は祝福されて生まれてくるの?」と…。

とてもじゃないが、素直に妹の存在を喜べなかった。