神に選ばれなかった者達 後編

だけど、それは決して萌音のせいじゃない。

久留衣家の養父が、そう見抜いているように。

生来、萌音は優しくて素直で、心穏やかな性格の持ち主だ。

純粋で…無邪気で…ちょっとまぁ…天然なところはあるけども。

人の悪口を言うことも、陰口を叩くことも、嘘をつくこともない。

だから俺は、萌音のそういうところが…。

…って、そんなノロケみたいな話はどうでも良いんだよ。

元々萌音は、そういう性格だった。

今も、それは変わらない。

それなのに…萌音は、実の両親のもとから離れて。

里親の家に預けられて以降、一度も実家には帰っていない。

実家を出た時、萌音はいつか家に帰る日が来ると信じていた。

いつかきっと、実の親が迎えに来てくれると…。

…だけど、今に至るまで、萌音は久留衣家で暮らしている。

今となっては萌音は、実家の家族のことを、口にすることさえなくなった。

もう忘れているかのように見えるが、萌音が忘れることは有り得ない。

今も覚えているはずだ。

心の何処かで、いつか本当の両親が迎えに来てくれることを、望んでいるのかもしれない。

…だけど、それは無理だろうと思う。

俺でさえそう思ってるのだから…萌音も、きっと同じ気持ちだろう。

…少なくとも、あの母親と…妹がいる限りは。

妹。

萌音の妹のことだ。

いたのか、って思うだろう?

いたんだよ。

久留衣家にいる、血の繋がりのない妹のことじゃないぞ。

萌音の実家にいる、萌音の実の妹のことだ。

思わずにはいられない。

あの妹さえいなければ、萌音が里子に出されることはなかっただろう。

今でも、萌音は実家にいたはずだ。

ちゃんと…両親のもとで…。

…その方が良かったのか、果たして今の方が良かったのか…。

それは誰にも分からない。

だけど、事実として萌音には妹がいる。

萌音が実家にいられなくなった理由が、この妹だ。

名前は真理亜(まりあ)。

直接的な原因は、この真理亜にあるが。

その前から、いくつかの躓きがあった。

というのも、萌音の両親。

萌音の実の両親は、元々、一人目の子は男の子を希望していたそうだ。

一人目は男の子、二人目は女の子…

とはいえ、絶対に男の子しか欲しくない、と思っていた訳ではなく。

「出来れば、一人目の子は男の子が良いね」と話していたくらいだった。

その上、ある程度萌音が大きくなってから、産婦人科の先生に性別を尋ねると。

「あ、多分男の子ですね」と言われた。

…あの医者、もしいつか会うことがあったらぶっ飛ばしてやる。

このヤブ医者!って。

こいつが全ての元凶だったような気がする。