萌音の養父、萌音がパパとママと呼んでいる久留衣夫妻は。
萌音が里子に出された理由を、萌音が幼い頃持っていた暴力性によるものだと思っている。
引っ越したばかりの頃の萌音は、本当に酷かったからな。
俺も見ていたから分かるけど、酷く追い詰められていた。
他人を傷つけることで、自分の身を守ろうとしていた。
夢の中での生き方を、現実でも活かしていた結果だ。
そして…これまで、実家で抑圧され続けてきた「反動」でもあるのだろう。
萌音が里子に出されたのは、萌音が乱暴だからではない。
むしろ久留衣家に来るまで、実家に居た頃の萌音は…大人しくて、自己主張をしなくて…。
誰かから傷つくことを言われても、何も言い返せずにじっと我慢している。
そういう子だった。
そうやって…実の両親に愛されようとしていた。
少しでも、「良い子」だと思ってもらおうと…。
一生懸命、一生懸命に我慢を重ねて…。
…それなのに、結局萌音の両親は、萌音を手離した。
萌音は「親に捨てられた」と思い込み、これまでの我慢が爆発した。
それまでずっと我慢していたものが、暴力に形を変えて現れたのだ。
傷つけられたり悪口を言われたりした…だけじゃなくて。
子供同士の他愛ないからかいでも、ほんの冗談のつもりの軽口でも。
少しでも自分が「傷つけられた」と思ったら、容赦なく暴力を振るった。
夢の中で鍛えているお陰で、萌音は人を殴る時、子供とは思えない力を出した。
おまけに、人間の急所というものをよく理解していた。
顔のど真ん中を殴って、相手の戦意を消失させる、などお手の物。
自分よりも年上の高校生が相手でも、急所である鳩尾に痛烈な一撃を加える。
更に畳み掛けて顎を殴り、脳を揺らすことで反撃をさせない。
同級生の母親相手でも、首を絞めて殺そうとする…。
萌音は、相手を痛がらせる為に暴力を振るっているのではなかった。
萌音の暴力は、あくまで相手を殺す為の暴力だった。
夢の中での経験のせいで、萌音は自分に敵意を向ける者を、イコール自分を殺そうとする者、と変換しているのだ。
だから、萌音はいつだって容赦がなかった。
生まれた時から、現実と夢の中、それぞれを行き来していた萌音は。
夢の中もまた現実の一つであり、区別をつけることが難しかった。
危うく、萌音は現実でも人殺しになってしまうところだった。
それでも、何とか萌音が人殺しの烙印を押されることなく、これまで暮らしてこれたのは。
間違いなく、里親である久留衣夫妻のお陰だった。
あの二人の弛みない努力と、深い愛情のお陰で。
萌音は、人殺しにならずに済んだ。
…そして俺もまた、佐乱李優として、この世に生まれることが出来たのだ。
この夫婦のもとに引き取られたことは、萌音にとって数少ない幸運だったと言えるだろう。
もしも、萌音がまだ実家にいたら。
あの両親のもとにいたら…きっと。
萌音は今頃、塀の中か、矯正施設か、あるいは精神病院の部屋の中で暮らしているところだっただろう。
萌音が里子に出された理由を、萌音が幼い頃持っていた暴力性によるものだと思っている。
引っ越したばかりの頃の萌音は、本当に酷かったからな。
俺も見ていたから分かるけど、酷く追い詰められていた。
他人を傷つけることで、自分の身を守ろうとしていた。
夢の中での生き方を、現実でも活かしていた結果だ。
そして…これまで、実家で抑圧され続けてきた「反動」でもあるのだろう。
萌音が里子に出されたのは、萌音が乱暴だからではない。
むしろ久留衣家に来るまで、実家に居た頃の萌音は…大人しくて、自己主張をしなくて…。
誰かから傷つくことを言われても、何も言い返せずにじっと我慢している。
そういう子だった。
そうやって…実の両親に愛されようとしていた。
少しでも、「良い子」だと思ってもらおうと…。
一生懸命、一生懸命に我慢を重ねて…。
…それなのに、結局萌音の両親は、萌音を手離した。
萌音は「親に捨てられた」と思い込み、これまでの我慢が爆発した。
それまでずっと我慢していたものが、暴力に形を変えて現れたのだ。
傷つけられたり悪口を言われたりした…だけじゃなくて。
子供同士の他愛ないからかいでも、ほんの冗談のつもりの軽口でも。
少しでも自分が「傷つけられた」と思ったら、容赦なく暴力を振るった。
夢の中で鍛えているお陰で、萌音は人を殴る時、子供とは思えない力を出した。
おまけに、人間の急所というものをよく理解していた。
顔のど真ん中を殴って、相手の戦意を消失させる、などお手の物。
自分よりも年上の高校生が相手でも、急所である鳩尾に痛烈な一撃を加える。
更に畳み掛けて顎を殴り、脳を揺らすことで反撃をさせない。
同級生の母親相手でも、首を絞めて殺そうとする…。
萌音は、相手を痛がらせる為に暴力を振るっているのではなかった。
萌音の暴力は、あくまで相手を殺す為の暴力だった。
夢の中での経験のせいで、萌音は自分に敵意を向ける者を、イコール自分を殺そうとする者、と変換しているのだ。
だから、萌音はいつだって容赦がなかった。
生まれた時から、現実と夢の中、それぞれを行き来していた萌音は。
夢の中もまた現実の一つであり、区別をつけることが難しかった。
危うく、萌音は現実でも人殺しになってしまうところだった。
それでも、何とか萌音が人殺しの烙印を押されることなく、これまで暮らしてこれたのは。
間違いなく、里親である久留衣夫妻のお陰だった。
あの二人の弛みない努力と、深い愛情のお陰で。
萌音は、人殺しにならずに済んだ。
…そして俺もまた、佐乱李優として、この世に生まれることが出来たのだ。
この夫婦のもとに引き取られたことは、萌音にとって数少ない幸運だったと言えるだろう。
もしも、萌音がまだ実家にいたら。
あの両親のもとにいたら…きっと。
萌音は今頃、塀の中か、矯正施設か、あるいは精神病院の部屋の中で暮らしているところだっただろう。


