神に選ばれなかった者達 後編

――――――…俺の名前は、佐乱李優。

萌音と同い年の高校二年生で、萌音と同じ高校に通っていて…。

貧乏な児童養護施設で育てられて、学校では『自由研究部』という部活に所属している。

しかも、その部活の副部長までやっている。

そして…萌音も同じく俺も生贄として、毎晩夢の中でバケモノと戦っている。

生贄専用の『処刑場』という掲示板では、「天使ちゃん」というハンドルネームを使っている。

私生活では、『劇団スフィア』という演劇団が好きで、よく萌音と一緒に公演を観に行っている。

…俺が自分について分かっていることは、精々このくらいだ。

俺は、自分が何者なのか分からない。

それはさながら、主人格が自殺したことで現れた、新しい人格の妹尾ふぁにのように。

自分が生まれた時のことを覚えていない。

だけど俺の場合、ふぁにと違って。

俺の中に、俺の「前の」人格は存在していなかった。

佐乱李優は、生まれた時から佐乱李優のままだった。

俺は、自分の親を知らない。両親の顔も、名前も覚えていない。

児童養護施設の職員達も、俺の親のことは知らないらしい。

果たして、俺は何者なのか。

俺は、自分のルーツを何も知らない。

ある日突然、俺はこの世に生まれた。

昨日まで何もなかった場所に、突然一輪の花が咲いているかのように。

俺は何の脈絡もなく、誰の祝福も受けず、気がつくとこの世に「存在」していた。

…普通、こんな生まれ方をしたら、自分が何者なのか疑い。

自分のルーツを知る為に奔走し、真実を追い求めようとするのだろう。

だけど俺は、そういうことをしなかった。

どうでも良かった。

俺は、自分が何の為にこの世に存在しているのか、その理由が分かっている。

俺が生まれてきた理由なんて、それだけで充分だ。

俺は、久留衣萌音の為に生まれたのだ。

彼女を助け、導き、共に戦う為に生まれた。

それだけは、はっきりと覚えている。

だから、それ以外のことを知りたいとは、微塵も思わない。