神に選ばれなかった者達 後編

翌日。

ママにも前夜の萌音ちゃんの話を伝えて、それからすぐに病院の予約を取った。

最初に行った病院では、俺達の話を聞くなり困った顔で、「うちでは診られない」と言われ。

その後色んな病院をたらい回しにされて…。カウンセリングや、行動療法なんかを試して…。

…それでも、結局萌音ちゃんを悪夢から解放するには至らなかった。

こればかりは、親の不徳の致すところ。

出来ることなら、萌音ちゃんを悪夢から救ってあげたかった。

萌音ちゃんの話を聞いて、俺はよく分かった。

萌音ちゃんは決して、人を傷つけたくて傷つけようとしてるんじゃない。

ただ、それしか方法を知らなかっただけなのだ。

これ以上、萌音ちゃんが暴力を振らなくても良いように。

もっと楽しい夢を見られるように…。

…だけど、俺達は無力だった。

色々な病院を当たったり、子供の夢に関する本を読んだり。

それらしい論文を探して読んだりして、自分なりに勉強をした。

それでも、萌音ちゃんを救ってあげることは、ついぞ出来なかった…。

…しかし。

何も出来なかった訳じゃない。

確かに、悪夢から救ってあげることは出来なかったけど。

それでも別の形で、萌音ちゃんに救いの手を差し伸べることは出来た。






…と、いうのも。

あれはいつの頃だった。いくつもの病院を巡って、いずれも不発に終わって。

結局自分達の手で何とかするしかないと、図書館や書店を巡って、悪夢に関する文献を読み漁っていた頃。

俺は、ふと思いついて萌音ちゃんに聞いたことがある。

それがきっかけだった。

「ねぇ、萌音ちゃん…」

「なぁに?」

「前、萌音ちゃんは夢の中で、『声』に導かれるって言ってたよね?」

「うん」

そのことが、少し気になっていたのだ。

だって、萌音ちゃんから話を聞いたところ。

夢の中の世界は、それはもう救いのない残酷な世界だった。

それなのに、夢の中で萌音ちゃんは、いつも『声』に助けられると言っていた。

俺が気になっているのは、その『声』の正体だ。

萌音ちゃんをいつも手助けしていると言っていた。つまり、その『声』は萌音ちゃんの味方なのだ。

そして、残酷な夢の世界で、萌音ちゃんが絶望せずにいられる唯一の救いでもあった。

その『声』というのが何なのか分かれば、萌音ちゃんを悪夢から救う…ことは出来なくても。

少しでも、楽になるんじゃないかと思ったのだ。