神に選ばれなかった者達 後編

そういう事情があるんだってことは分かった。

よく分かった。

だけど、実際に萌音ちゃんに殴られて、被害を受けた人は。

そんな萌音ちゃんの事情に、理解を示してはくれないだろうから。

まさか、殴る相手殴る相手に、いちいち今の話を聞いてもらう訳にもいかず。

それに、多分他の人はなかなか信じてくれないだろうから。

たかが夢だろ?と言われるのがオチ。

たかが夢。…されど夢、なのだ。萌音ちゃんにとっては。

一体、どうして萌音ちゃんは、そんな夢を見てしまってるんだろう?

萌音ちゃんが地元から離れ、実の両親からも離れて暮らすストレスのせい?

そのせいで、タチの悪い悪夢を見ているのだろうか。

…いや、そうじゃない。

萌音ちゃんが悪夢を見るようになったのは「産まれた時から」と言っていた。

つまり、もっともっと前…萌音ちゃんが赤ん坊の頃から、ずーっと悪夢を見続けているのだ。

こんな偶然、あるのか?

…あると信じるしかない。萌音ちゃんが「ある」と言っているのだから。

他の誰が信じてくれなくても、親である俺だけは、萌音ちゃんを信じてあげなくては。

こちらが信じなければ、萌音ちゃんは決して俺達親を信じてはくれないだろう。

俺は聞いたことがないけど、もしかしたらそういう病気があるのかもしれない。

「…どうして黙ってるの?」

全部話し終えた後、萌音ちゃんが聞いてきた。

何処となく、不安そうな声だった。

「ん?いや…ちょっと色々考えてて…」

「萌音が嘘ついてるかもって?」

「いいや。萌音ちゃんが嘘をついてるとは思ってないよ」

それは本当に、一度も思ってない。

萌音ちゃんは絶対に嘘はつかない。信用して良い。

「どうしたら良いのかって考えてたんだ。萌音ちゃんがこれ以上、苦しまないでいられるように」

「…」

「明日、ママに今の話を教えても良い?萌音ちゃんのこと一緒に考えたいんだ」

「…そうなの?」

「そうだよ」

「…そっか…」

…納得、してくれただろうか?

「大丈夫だよ、萌音ちゃん…。心配しないで。パパもママも、萌音ちゃんの味方だから」

「…ん」

萌音ちゃんは、こくりと頷いた。